API経済圏を作るには、公開する腕を磨くと当時に、使う側としても目利きになる必要がある。山積みのパズルの中からお宝の「ピース」を見つけて、初めて成功の果実を味わえる。日本郵便の子会社や三菱地所グループは、自社に最適なAPIと運命的な出会いを果たした。APIの力を借りて競争力のあるアイデアを形にするツボはどこにあるのか。
相次ぐAPI公開の動きをいち早くキャッチし、自社サービスの魅力向上に結びつけている企業も出てきている。日本郵便の子会社で、ダイレクトメール事業を手掛けるJPメディアダイレクトはその1社。発行枚数の減少が続く年賀状の企業利用を、APIによって再び盛り上げようと試みる。
2015年10月に開始した年賀状などの作成・送付サービス「B2B LoveLetter」がそれだ。名刺管理サービスSansanのAPI を活用。Sansanを利用する企業なら、APIを通じてデータを取得、宛名として印刷できる(図9)。手間を省き、需要を喚起する狙いだ。
多くの企業は、年末になると部や課など組織単位で宛先をまとめ、名前や住所を打ち直す。1カ月近くかかることもあるという。
作業が面倒だからという理由で年賀状が飽きられてしまうかもしれない。こんな危機感から、「年賀状の価値を企業がもう1度見直すきっかけがほしかった」(奥田敏博取締役)。そう考えているときに「Sansan Open API」が公開されると耳にした。
API連携するといっても、使い方が複雑になるわけではない。あらかじめ印刷したい相手の名刺につけるタグを決め、組織内で周知しておく。各社員は年賀状を送る相手の名刺にSansan上でタグを付与すると、印刷担当者はB2B LoveLetterで注文する際にタグが付いた名刺データだけを瞬時に抽出できる。
宛先が重複していても名寄せが可能だ。Sansanの山田尚孝 ビジネス開発部プロダクトアライアンスマネジャーによると、年賀状作成に2週間かかっていたある企業は作業時間が3日に短縮できたという。
「(噂を聞きつけた)企業担当者から、ぜひ使いたいという声が寄せられている」。JPメディアダイレクトの松本宏行ソリューション事業本部担当部長は手応えを感じる。同社は、B2B LoveLetterを新たな市場を開く武器として育てる。イベント招待状や暑中見舞いなど、需要喚起のアイデアは尽きないとも話す。