APIを公開するだけで、すぐに経済圏が生まれるわけではない。魅力あるAPIを設け、力を借りたい企業にアピールするなど戦略が欠かせない。先行企業はどんな姿勢でAPI公開に取り組み、次の事業への“扉”を開いたのか。住信SBIネット銀行やトヨタ自動車などの事例から、ヒントを浮き彫りにする。
メガバンクを始めとする国内銀行の間で、APIを公開する機運が高まっている。顧客の資産を預かる銀行にとり、顧客の口座情報や取引情報が漏洩すれば銀行自身の信用が失墜しかねない――。
そんな理由から後ろ向きだった各行が姿勢を転じた理由は一つ。消費者を惹きつけ、競争に打ち勝つサービスを生み出すにはAPIの活用が欠かせなくなったからだ。
「銀行員が100人で考えるより、100万人の開発者に考えてもらった方が良いサービスが生まれる」。
三菱UFJフィナンシャル・グループの藤井達人 デジタルイノベーション推進部シニアアナリストは断言する。「開かずの扉」を、第三者に開くことに前向きだ。
FinTechブームの裏側で
三菱東京UFJ銀行が2016年3月にハッカソン「Fintech Challenge 2016 "Bring Your Own Bank !"」を開いたのは、経済圏を生み出すAPIを探し出す目的からだ(図5)。
ニーズのありそうなAPIをできる限り提供したうえで、参加チームごとにそれぞれの意見を聞く時間を設けた。本音を探るため、「フィードバック賞」を用意して最も有用な意見をしてくれたチームを表彰するなどの工夫も凝らした。