ではサイトサーベイの手順▼を説明していこう(図2-1)。
サイトサーベイの1番目のステップは目視確認だ。フロアレイアウト、天井やキャビネットの高さ、壁などの材質、机上検討したAPの想定設置位置などを目視確認し、必要に応じてメジャーなどで測定する。これにより、APのだいたいの電波到達範囲を推定する。
2番目のステップでは、APを設置する前の現状の電波状況を測定する。これにより、無線LANで利用可能なチャネルを割り出す。
3番目のステップで、2番目のステップで決めた利用チャネルを設定したAPを仮設置し、AP1台当たりのカバー範囲や壁などの遮蔽物による電波の減衰状況などを確認する。これにより、1番目のステップで推定した電波到達範囲が正しいかどうかを確認する。
事前の準備として、無線LANの利用エリア、用途といった要件を再確認しておく。
無料の電波測定ツールもある
2番目と3番目のステップで電波の測定に使うのが、電波測定ツールと呼ばれるソフトウエアだ。パソコンやスマートフォンにインストールして利用する。
こうしたツールは大きく2種類ある(表2-1)。一つは「無線LANの電波の測定に特化したツール」、もう一つはスペクトラムアナライザーと呼ばれる「無線LAN以外の電波も測定できるツール」だ。前者のツールは、APの存在や利用しているチャネル、受信する電波の強さなどを測定できるが、同じ周波数帯を利用する無線LAN以外の機器(電子レンジやデジタルコードレスフォンなど)の電波の有無は検知できない。一方、スペクトラムアナライザーはそれが可能である。これら2種類のツールを組み合わせて利用することで、電波測定の精度を高められる。
前者のツールには、無料で利用できるものもある。代表的なのが、Android端末にインストールして利用する「Wifi Analyzer」だ(図2-2)。2.4GHz帯と5GHz帯の電波状況をそれぞれ電波強度のグラフとして確認できる。縦軸が電波強度、横軸が左から昇順のチャネル番号だ。5GHz帯の表示では、上の部分をスライドさせることでW52、W53、W56▼のそれぞれのチャネルを表示できる。APの一覧や特定APの電波強度を表示することもできる。ただし、5GHz帯の情報を表示するには、Android端末の無線LAN機能が5GHz帯に対応している必要がある。
一方、スペクトラムアナライザーの代表的な製品には「AirMagnet Spectrum XT」がある(図2-3)。無線LANで利用する帯域のリアルタイムFFTグラフ▼を表示したり、無線LAN機器以外の干渉源リストを表示したりできる。
W52は5.15G~5.25GHzでチャネル番号は36/40/44/48、W53は5.25G~5.35GHzでチャネル番号は52/56/60/64、W56は5.47~5.725GHzでチャネル番号は100/104/108/112/116/120/124/128/132/136/140。
FFTはFast Fourier Transformの略で、高速フーリエ変換というアルゴリズム。フーリエ変換を行うことで、周波数のスペクトル(周波数の分布)をグラフ化できる。