IoTシステムの開発は、従来の業務システムの開発とは大きく異なる。スモールスタートやクラウドは当たり前。セキュリティは人命にかかわる。IoTシステムの第一人者に、開発時に注意すべき10のポイントを解説してもらう(編集部)。
近年、IoTへの注目の高まりを受けて、多くの企業でIoTソリューション(以下IoTシステム)の開発・提供が始まっている。しかし、IoTシステムは従来のオフィスでの業務改善やコミュニケーション効率化を目的とした情報システムとは異なる特性を持つ場合が多い。
そのためITエンジニアは、思いがけない落とし穴に陥らないよう、従来のシステム開発と比べ、IoTシステムでは開発がどう変わるのかについて留意すべきである。
そこで以下では、筆者の経験を基にIoTシステムの開発における10のポイントを解説していこう。
[ポイント1]ユーザー評価はリスクとなる
一つめは、ユーザーによる評価はリスクになる点だ。一般的なシステム開発では、ディスプレイに表示されたユーザーインタフェースを介して、ユーザーから評価を受けられる。稼働後なら、多くのユーザーの口コミが生まれ、フィードバックや社内での評価が形成される。つまり開発側は、これらのユーザー評価に従って、システムを改善すればよかった。
ところが、IoTシステムの対象は「モノ」である。そのためユーザーからの使い勝手の評価やフィードバックは予想以上に受けられない。かといって、無理にユーザーから評価を引き出そうとすると、根拠が乏しい単なる意見となり、それがリスクになる。
これは業務システムの開発を手掛けてきたITエンジニアにとって、とても戸惑う変化だろう。開発側からすれば、提供したシステムがどのように受け入れられているか分からないのだ。結局、一部のユーザーによる偏った評価になるケースが多く見られる。
そこで重要となるのが、開発側がこれまでのシステム開発以上に「どう使われているか」「当初想定した効果が生み出されているか」といった運用の視点を持つことである。
具体的には、開発側がユーザーに頼らず自分たちで評価や効果を把握できる仕組みを用意しておく。例えば、評価項目については単に「データが集まっているか」ではなく、集めたデータが「当初の期待通り使われているか」「効果が生み出されているか」まで踏み込んで、第三者的な視点で評価できる仕組みを用意しておこう。
この作業に手を抜いて、一方的に利用部門や少数のユーザーに評価を委ねると、最悪の場合、うまくいかなかった時の責任を開発側が背負う可能性がある。だからこそ、IoTシステムの開発では、エンドユーザーや発注側だけにシステムへの評価を求めるのではなく、どう使われているかを開発側が積極的に見える化しなければならない。