予防保守やデータの見える化によるサービス向上など、IoTの活用は本番だ。一方でIoTシステムの開発は、ITエンジニアにとって多くの挑戦がある。3社の先進事例から、IoTプロジェクトの実際を見てみよう。
業務用ラベルプリンター大手のサトーは、IoT(Internet of Things)を取り入れた無料の保守サービス「SATO Online Services(SOS)」を2015年8月から提供している。SOSは、プリンターが自動的に発信する稼働状況を生かした「見守り型」のサービスである。
「プリンターのダウンタイムゼロの実現が、SOSの目的だ」。SOSの開発を率いるサトーの長尾博史氏(サービス事業統括部 部長)はこう強調する。「これまでは故障すると顧客から連絡があり、それから駆けつけていた。この方法では修理までの間、顧客のビジネスを止めてしまう。何かあったら駆けつけるのではなく、壊れる前に駆けつける『予防保守』をSOSで実現した」。
SOSによる新業務プロセスの流れはこうだ。まずサトーの顧客企業に設置したプリンターが、15分おきに自動的に稼働実績(走行距離と呼ぶ)や設定情報などのデータを、クラウド上に構築したSOS向けシステムに通知する。走行距離が故障の可能性が高まる値を超えたら、営業担当者に通知する。値は過去のデータから割り出している。通知を受けた営業担当者は顧客企業の元に駆けつけ、今後発生し得る故障を未然に防ぐ(図1)。
「予防保守はプリンターからの情報を自動的に取得できるからこそ、実現できる仕組みだ」と長尾氏は話す。SOSでは予防保守以外にも、顧客向けにプリンターの稼働情報を提供するダッシュボードを用意している。複数拠点にプリンターを設置する顧客企業の担当者が、自社拠点のすべてのプリンターの稼働状況を一元管理できる。