2016年7月27日に東京・目黒で開催された「ITインフラSummit 2016夏」。本稿では、インフラ活用の先進ユーザーや、インフラ関連ベンダーの専門家による多数の講演のうち、データ基盤に関するものを中心にレビューする。

 特別講演では、積水ハウスが同社のIT活用の現状とそれを支えるIT基盤を紹介。続くソリューション講演では、ファルコンストア・ジャパン、日本IBM、Veeam Software Japanの3社が、最新のソリューションとその活用法について、それぞれ解説した。

特別講演:積水ハウス
部門の壁を超えた顧客情報共有基盤をクラウドで構築

積水ハウス 執行役員 技術業務部長 雨宮 豊 氏
積水ハウス 執行役員 技術業務部長 雨宮 豊 氏

 特別講演には、積水ハウスの雨宮豊氏が登壇。同社におけるIT活用の在り方とそれを支える情報基盤作りについて解説した。

 雨宮氏はまず、現在の情報基盤が稼働する以前の状況を振り返った。当時は、各部門が別々に構築した物件情報管理システムが複数、稼働していた。個別に使いやすさを追究したために、他の部門のユーザーは、必要な情報がどこにあるのか分からないという状況だった。無駄な作業の発生に加えて、情報の受け渡しもさながらバケツリレーのようで、ミスが起こりやすい状態だったという。

部門横断で情報を一元管理するための基盤を構築

 こうした状況を改善するために、2010年から全社で始めた取り組みが、様々な業務で発生した情報を、顧客の「邸」ごとに管理しようという「邸情報戦略」だ。商品開発から設計、生産、施工、引き渡し、アフターサービスまで、同社の業務プロセス全般を横断して、情報を一元管理するための改革であり、全社共通の情報基盤も、この一環として構築されたものだ。

 新情報基盤は、基幹業務システム「CANVAS」および3次元BIM(ビルディング情報モデル)CADシステム「SIDECS」の2システムと、端末として使う1万425台のiPadと1万1000台のiPhoneで構成する。様々な社内情報や、「邸」情報を蓄積した「邸情報ビッグデータ」に、いつでもどこでもiPadやiPhoneでアクセスできる環境を整えた。

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 CADシステム「SIDECS」は、設計者だけでなく営業担当者も利用する。「プレゼンモード」というプレゼンテーションに特化した環境を搭載しており、このモードを利用して、営業担当者が顧客に、iPadでプレゼンテーションをする。設計者が作成した3次元モデルをベースに外壁やフローリングの部材を変えた住宅内外の3次元CGを見せたり、過去に同じ外壁を使って施工した住宅の外観写真を見せたり、といったプレゼンテーションができる。

 雨宮氏は、「モバイル環境でも、多くの情報が活用できるようになったため、ワークスタイルの変革が進んだ。業務スピードが高まり、残業時間を大きく削減できた」と語る。設計を担当する社員で月平均20時間、建築現場のマネジャーで月平均15時間の削減効果があったという。全社的な削減額は、前者が月に約4000万円、後者が月に約2000万円に上るという。

「住宅」がIoT社会のプラットフォームに

 雨宮氏は、少子高齢化や地球温暖化、安全・安心な環境整備など、現在の社会課題を解決するためにはIoT(モノのインターネット)やAI(人工知能)の活用が必須だとした上で、「IoT社会において、住宅が重要なプラットフォームになるだろう」と予測する。

 「ハウスOS」とでも呼べそうな基盤ソフトの上に、住宅内の設備やエネルギー、セキュリティなどをコントロールするモジュールを搭載するイメージだという。「社会課題の多くが住宅に関係していることから、ユーザーにとってもベンダーにとっても、このような仕組みは効率がよいはず」と指摘する。

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