2016年7月27日に東京・目黒で開催された「ITインフラSummit 2016夏」。本稿では、インフラ活用の先進ユーザーや、インフラ関連ベンダーの専門家による多数の講演のうち、運用基盤に関するものを中心にレビューする。

 特別講演では、IDC Japanが「運用モデル改革」の重要性を解説、続くソリューション講演では、ServiceNow Japanが最新のソリューションとその活用法を解説した。

特別講演:IDC Japan
運用モデル変革に挑むIT部門に求められる行動変容と意識改革

IDC Japan ソフトウェア&セキュリティ リサーチマネージャー 入谷 光浩 氏
IDC Japan ソフトウェア&セキュリティ リサーチマネージャー 入谷 光浩 氏

 特別講演にはIDC Japanから入谷光浩氏が登壇。「デジタルトランスフォーメーション(DX)」を成功に導くために必要な、運用モデルの変革について解説した。DXの定義は「デジタルによって顧客、パートナー、従業員との新たな関係を築き、ビジネスを変革させ、今までになかった価値を創出すること」。実例として配車サービスのUber、民泊のAirbnb、フリーマーケットアプリのメルカリなどがある。

 DX実現の要件は、(1)DXの基盤となるプラットフォーム、(2)DXを加速させる新しい技術、(3)DXの実現を促進させるガイドライン、(4)新しい価値を創出するDX、(5)産業をつなぎ発展するDXエコノミー、だという。そのうち(3)に直結するのが、運用モデル変革の取り組みだ。

 運用モデル変革にあたりIT部門は、(1)既存ITインフラを第3のプラットフォームに発展させ効率的に管理する、(2)ハイブリッドクラウド化を実現しDXの基盤を作り上げる、(3)DevOpsによってビジネスイノベーションの創出をサポートする、の3つに取り組む必要があるという。

サービス管理の自動化、DevOpsが大きな鍵

 インフラを仮想化、さらにはクラウド化する動きが急速に進んでいるが、「問題はその成熟度」と入谷氏は指摘する。リソースプールを作るだけでは不十分で、サービス管理の自動化が必須になる。利用部門が自ら、必要なITサービスを“オーダー”し、プロビジョニングを含めて自動的に入手できる、といった状況を実現することだ。

 500社を対象にした調査によれば、クラウド関連の投資は2020年に向けて年率30%以上で伸びる見込み。入谷氏は「システムごとに適切な置き場は違う。様々な環境で稼働するシステムを連係させ、新しい価値を生み出さなければならない」と語る。

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 この、決して容易でない目標を達成するためには、「ワークロード中心型プロセスの導入」「統合的でオープン標準な運用管理ツールの導入計画」「レガシーツールからの長期的な移行計画」「スキル、役割、ワークフローのアップデート」「IT部門とビジネス部門のガバナンスの調整」が必要になる。

 その大きな糸口になるのがDevOpsだ。IDCによる定義は「ビジネスリーダー、開発、テスト、デプロイ、運用の各チームが一体となってビジネスケイパビリティを高め、それを発揮するための方法論と一連のプラクティス」。入谷氏はDevOpsの具体例として、全米2位のディスカウントチェーンTargetの取り組みを紹介した。

 最後に入谷氏は、DX時代のIT運用への取り組みについでのIDCの提案として、以下の5つを示し、講演を締めくくった。

1. インフラ、運用に固執していては何も始まらない。アプリやビジネスを知ってこそ新たな知見や発見が生まれる

2. 顧客/ユーザーがどうしたら満足するのかを常に考える。自分達(IT部門)が楽になることが最優先ではない。顧客/ユーザーが満足すれば自分達(IT部門)も楽になる

3. 自分達(IT部門)だけでITの全てを運用しようとしない。ビジネス部門に任せられるところは任せてしまおう。でもモニタリングは怠ってはならない

4. 組織、場所を超えてコラボレーションする。ITがハイブリッドなら人や組織もハイブリッド化する

5. DevOpsは情熱を持った人たちで小さく始める。そして周囲を巻き込んでムーブメントを起こす

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