イノベーション案件では、プロジェクトマネジャーの考え方を切り替えたい。変化や失敗を受け入れ、多様性や外部の力を最大限生かす必要があるからだ。富士通でイノベーション案件を支援する専門家が六つの心構えを解説する。
新しい価値を生み出すサービス(システム)の要件を定める際、作業効率化を目的とするシステムの場合とは異なり、業務担当者が課題を理解していない場合がある。そのため、システムに対する要求を語ってくれない。しかもターゲットとなる顧客やユーザーの定義も曖昧だ。
イノベーション創造型と呼べるこうしたプロジェクト(イノベ案件)では、仮説を構築し、システムの実装、およびフィードバックというプロセスを迅速に繰り返す。これにより、無駄な要素を最小限に抑え、素早く改良を続けながら、成功に近づけるというポスト「モダンPM」のプロセスである。
ここで大事なのは、プロジェクトマネジャー(プロマネ)が考え方を切り替えることだ。従来のQCD(品質、コスト、期間)の考え方を大きく変えなければならない。以下では、イノベ案件においてプロマネが持つべき、六つの心構えを紹介しよう(図1)。
1 スコープの変化を許容する
新たな価値を生み出すシステムでは、ユーザーから要求を提示されることがほとんどない。ビッグデータやIoT(Internet of Things)といったキーワードがあったとしても「こういったビジネスに取り組んでいきたい」という強い意志が存在しないことも多い。この場合、要求を引き出すのが相当に難しく、プロジェクトがなかなか前に進まない。
そこでイノベ案件では、プロジェクト全体を通して、要件(スコープ)が変化することを許容する必要がある。最終的なスコープが決まるまでは、手戻りを最小限に抑え、作業の優先順位を付けて開発を進めるプロセスだ。
大事なのは、スコープが変化していくプロジェクトにおいて、プロマネは何をもってメンバーの意識を統一させるかである。それがないと、メンバーの足並みは決してそろわない。