現実世界からデータを収集し、コンピュータで再現する「サイバーフィジカルシステム(CPS)」。毎年の豪雪に悩まされる北海道札幌市全体にCPSを適用する実証実験に取り組んでいるのが北海道大学だ。限られた予算の中で、除排雪の作業を効率化する。

 CPSは基本的にはデジタルツインと同じ考え方で、IoT(インターネット・オブ・シングズ)で収集したデータを駆使して、現実の業務に役立てる(参考記事:IoTの「洞察」が「第三の市場」を生み出す、米GEが取り組む「デジタルツイン」)。ドイツの国策で製造業全体の生産性を向上させる「インダストリー4.0」でもCPSが中核となっている。

 インダストリー4.0のCPSは、工場の生産ラインをシミュレーションし、試行錯誤を繰り返す。設計開発のコストを大幅に削減できるほか、急な受注の変動に対しても、生産ラインやサプライチェーンを柔軟に変更できることがメリットとなる。

 北海道大学が取り組むCPSでは、道路の渋滞状況や降雪量などのデータを使う。同大学特任教授の田中譲氏は「都市全体から収集したデータで、豪雪の被害をシミュレーションする。除排雪の必要性や、作業すべき場所を見極めるのに役立てる」と話す。

写真1●北海道札幌市内の様子。平均年間降雪量は約6メートル。人口100万人以上の都市では世界1位だという
写真1●北海道札幌市内の様子。平均年間降雪量は約6メートル。人口100万人以上の都市では世界1位だという
(画像提供:北海道大学)
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 北海道札幌市の平均年間降雪量は約6メートル。人口100万人以上の都市では世界1位だ(写真1)。同市は除雪のために年間約150億円の予算を設けている。降雪量によって予算は変動し、「220億円ほどまで膨れ上がったこともあった」(田中氏)という。

 北海道大学大学院情報科学研究科の猪村元特任助教によれば「1日当たり、1億~1億5000万円の費用がかかる。限られた予算のなかで、やみくもに除排雪を進めるのは非効率だ。渋滞や事故などにつながりやすい箇所の除排雪を優先的に進めることが求められる。

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