クラウド活用が得意な新興勢力の台頭が著しい。従来型のSIモデルに固執していては、出番が減るばかりだ。今後のSIベンダーの役割は、クラウドの特性を生かしたシステムの提案や構築。クラウドSIを担うスキル獲得やビジネスモデル転換に挑む必要がある。
クラウド活用のノウハウが豊富なクラウドSIベンダー。その手腕を高く評価する1社が、回転寿司チェーンを展開するあきんどスシローだ(図2)。
「予約が集中する年末年始も、おかげで乗り切れた」――。あきんどスシロー 情報システム部 開発課長の坂口豊氏は、繁忙期をこう振り返る。家族が集まる年末年始は寿司の持ち帰り需要が高まり、スマートフォンアプリなどからネット注文が殺到。AWS上で稼働する持ち帰りネット注文システムの負荷が、大きく上下に振れた。
このシステムは、クラウドSIを得意とするクラスメソッドがインフラ設計や運用を担当。「DBサーバーのスペック調整や、Webサーバーの負荷を監視してオートスケールのしきい値を変更してくれたおかげで、年末年始のピークを乗り越えられた」(坂口氏)。機械学習などAWSの新サービスの活用にも、クラスメソッドと共に取り組む。
クラウドSIに踏み込めない理由
クラウドSIを得意とする新興ベンダーの台頭が著しい。オンプレミス環境のSIを手掛けてきた従来ベンダーは変化を迫られているが、簡単にはクラウド活用ノウハウは身に付かない(図3)。
クラウドの利点を生かすには、スケールアウトしやすい設計にする、PaaS(プラットフォーム・アズ・ア・サービス)などの新サービスを素早く使うなど新たな設計手法が必要だ。「新サービスが続々登場し、随時改良される。頑張ってついていくほかない」(NTTデータ ビジネスソリューション事業本部 デジタルビジネスソリューション事業部 開発統括部 中井章文統括部長)。アジャイル開発など、アプリケーションの作り方も変わる。
ビジネスモデルの転換が迫られることも、従来ベンダーがクラウドSIに踏み込めない理由の一つだ。クラウドSIでは、ハードウエアやソフトウエアの販売などは収益源にならない。PaaSやSaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サビス)上のアプリケーションやサービスを組み合わせる開発手法も広まりつつあり、アプリケーションをゼロから開発して利益を得る仕組みにもほころびが見えてきた。
大手ベンダーは、伝統的に変化に対して保守的すぎるとの指摘もある。モバイルアプリ開発用サービスなどを提供するグルーヴノーツの最首英裕代表取締役社長は「国内のSIベンダーは、過去に失敗案件の責任を取らされすぎた」と話す。失敗を恐れて新しい取り組みを避けがちで、「時代が変わっているのに、昔ながらのやり方に固執してしまう」(同氏)。