電子メールはすっかり、社会インフラになりました。携帯電話のキャリアメールや、Webメールなど、電子メールは様々な形で生活に浸透しています。「まったく使っていない」という人はほとんどいないでしょう。

ツールから社会インフラへ

 電子メールの以前からの用途は主として、友人や家族との連絡、業務連絡、メーリングリスト、ファイル交換などです(表1-1)。運用や開発の現場では、何か障害があった時の通知をメールで受けた人も多いでしょう。

表1-1● 電子メールの主な用途
表1-1● 電子メールの主な用途
電子メールは第一に使われるコミュニケーションツールであり、携帯電話の普及で誰もが持つ連絡先として、各種サービスのインフラとなっている。そのぶん、悪用される場合もある。
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 しかし今は、こうした基本的なコミュニケーションツールの主役は、LINEラインやSkypeスカイプなどのオンラインチャットサービスに移りつつあります。先進的なIT企業のシステム管理部門では、障害通知もチーム内のチャットツールである「Slack(スラック)」を利用する場面が増えてきました。

▼Slack チーム向けメッセージ通信を実現するためのオンラインサービス。

 その一方でメールは、一種の社会インフラとして重要性を増しています。例えばオンラインサービスを利用し始める際、メールを使ってアカウントを認証するのが一般的です。メールアカウントを乗っ取られると、様々なオンラインサービスが勝手に使われてしまう危険があります。

スパム対策はサーバーでも実施

 そこで重視されるのがメールの安全性確保です。そもそもメールの歴史は安全性の確保とスパムメール(迷惑メール)との戦いでもありました。最近はメールに添付されたウイルスにより、社内の情報が流出してしまうセキュリティ事案が多発しています。スパムメールやフィッシングもまだまだ撲滅できていません。メールサーバーが踏み台にされて、スパムメール送信元になったという話もいまだに聞きます。

 ただしスパムメールの流通量そのものはかなり減ってきています。2008年には流通する80%ものメールが迷惑メールだったのが、現在では40%以下にまで下がっています(図1-1)。Part 4でも説明するように、Sender IDやDKIMといったサーバー側でのスパム対策が功を奏しており、こうした技術の利用は必須になります。もちろん、パソコンなど各端末で実施するウイルス対策も重要です。

図1-1● 減少する迷惑メール
図1-1● 減少する迷惑メール
一時期はメールトラフィックの80%以上を占めていた迷惑メールだが、様々な対策により現在は40%前後まで減少している。データはインターネットイニシアティブ(IIJ)が発行した「Internet Infrastructure Review Vol. 23」から(http://www.iij.ad.jp/company/development/report/iir/) 。
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▼Sender ID 送信元の認証に使う技術です。送信ドメイン認証のSPFに米マイクロソフト社が開発した「Caller ID for E-Mail」を統合しました。
▼DKIM DomainKeys Indetified Mailの略です。電子署名を使った送信ドメイン認証方式です。

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