今回は、デジタルマーケティングのキーワードである“データドリブンマーケティング”を成功に導くためのポイントと、データドリブンマーケティングに不可欠な高速PDCAを実践するためのKPI(重要業績評価指標)の設定について紹介します。
なぜ高速PDCAが不可欠なのか
デジタル時代の今、ビッグデータの活用はビジネスの成否を左右する重要な取り組みとなっています。しかも日々進歩する技術によって、企業やブランドと顧客の関係性は目まぐるしく変化しています。
例えば、重要な顧客接点の一つであるトリプルスクリーン(テレビ、PC、モバイル)への接触時間を見ると、ここ10年で急速にモバイルの比率が増加しました。若年層では、既にモバイルへの接触時間がテレビとPCの合計を上回っています。
しかもここ数年、“プログラマティック(広告の自動取引)”や“パーソナライゼーション”の導入が進んでいることからも分かるように、広告やCRM(顧客関係管理システム)の領域でビッグデータの活用が一般化しています。今後はさまざまなタッチポイントで、データを活用した新たな体験を顧客に提供する技術やアイデアがさらに増えてくるでしょう。
例えば、ファストフード店や清涼飲料水ベンダーなど自社にモバイル会員を数多く抱えている会社では、顧客が買いたくなるような体験価値を生み出しています。具体的にいえば、リアルタイムの気温データとターゲット属性を掛け合わせて、最適なクーポンをモバイルアプリ経由で配信するといった取り組みをしています。
気温が35度を超えて猛暑になった時点で、ビジネスパーソンにはアイスコーヒーのクーポンを、女性にはアイススムージーのクーポンを配布したり、一方で0度を下回ったときには、外回りのビジネスパーソンにホットコーヒーのクーポンを配布したりするといった手法です。リアルタイムのデータをうまく活用しモバイルを使って直接手元までメッセージを送ることで、顧客が買いたくなるような体験価値を有効に生み出した例といえます。
しかし、マーケットが目まぐるしく変化する現在では、マーケティング戦略の見極めが困難になります。マーケティング戦略を立てている間にデータが蓄積されて過ぎて方向性を見失ったり、過去のデータ分析をしている間に環境が変わり分析結果が陳腐化したりするといったことがよく起こるからです。
こういった状況下で確実な対応方法の一つは、PDCAを高速に回すことです。不確実性の高いマーケット環境だからこそ、絶えず施策を実施・評価しながら戦略の方向性を正していくという考え方です。
しかし、“PDCAを高速に回す”という言葉は、マーケティングの世界では使い古された言葉です。そんなことは分かっているよ、とおっしゃるマーケターの方がほとんどだと思います。
「高速PDCA」という言葉をもう少し分解すると、さまざまなビッグデータを“迅速に収集”し、“短時間で分析“し、”課題が分かりやすくなるように可視化”し、“施策改善へ迅速に反映させる仕組みを導入”することといえます。これを実現するには、さまざまなビッグデータをリアルタイムに貯めながら必要なデータを有機的に統合できるDMP(Data Management Platform)ツールや、膨大なデータを可視化するBI(Business Intelligence)ツール(ダッシュボード)、さまざまなデータ形式を集計・加工して分析し課題を明確にするアナリティクスツール、改善を自動化するマーケティングオートメーション(MA)ツールなどを統合して、プラットフォームを構築することが必要です。