「マイナンバーが漏洩すると、あらゆる個人情報が漏れてしまう」と考えるのは誤解であり都市伝説の一つだ。マイナンバー制度で本当に怖いのは、既に頻発している特殊詐欺に限らない。制度の外で、あらゆる個人情報が集積されてしまう「名寄せ」にある。

 一部の企業で従業員のマイナンバーを記載した書類が盗難に遭ったと伝えられている。また、社内電子掲示板に従業員名簿と一緒に掲示しそうになったといった事例が個人情報保護委員会のサイトで紹介されている。しかし実は、マイナンバー制度で企業が本当に恐れるべきは、漏洩そのものではない。

 一方で、マイナンバー制度に便乗した特殊詐欺が頻発している。こうした特殊詐欺の手口は時事ネタに便乗したり、事情に疎い相手に付け込んだりするのが常套手段である。制度の複雑さや政府の広報不足に問題があるとしても、マイナンバー制度だけの問題ではない。

マイナンバー制度にかけられた“3重ロック”

 マイナンバー制度は、マイナンバーの不正利用を防ぐために“3重の鍵”をかけている。1つは、利用目的の限定だ。法律に書かれた目的以外でマイナンバーを利用するのは禁止されている。

 法律には「どの行政機関が、どんな事務でマイナンバーを使うのか」、「どの行政機関(情報照会者)が何のために、どの行政機関(情報提供者)に、どのマイナンバー付きの個人情報(特定個人情報)を照会してよいか」を列挙している。

 警察の捜査資料にマイナンバーが含まれていたとしても、必要な資料収集が阻害されないように例外的に認められるとしながら、「捜査範囲を超えて、取得したマイナンバー付きの個人情報を分析したり、他の捜査に活用したりすることは法律で禁止」という具合だ(内閣官房「マイナンバー制度に関する基本的な質問にお答えします」、PDF))。

 各行政機関が保有する納税や社会保障の個人情報は、行政機関が分散して管理している。それぞれの情報は限定された機関別符号を使って照合する。このため、制度の枠内でマイナンバーの漏洩によってあらゆる個人情報が漏れてしまう事態は想定しにくい。また行政機関の誰が情報を照合したかも記録が残る。照会履歴は2017年に稼働する「マイナポータル」(情報提供等記録開示システム)を使えば、確認できるようになる予定だ。

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