米国でB2Bマーケティングの効果を高めるアプローチとして期待が高まっているAccount Based Marketing(ABM、アカウント・ベースド・マーケティング)。前編に引き続き、米Marketoの日本法人、マルケト 代表取締役社長の福田康隆氏に話を聞いた。福田氏は、ABMによって変わる企業のビジネスプロセスや、日本のB2B企業がABMに取り組む場合の留意点を指摘した。
記事構成は冨永 裕子=ITアナリスト)
日本でも2016年秋にABM機能が利用可能に
では具体的に、ABMによって企業のビジネスプロセスはどう変わるのか。Marketoのマーケティングオートメーション(MA)ツールの機能がABMプロセスを技術的にどうサポートするのか。
MarketoのABMのプロセスは、「Identify Accounts:アカウントの特定」「Profile Accounts:アカウントの調査」「Create Contents:コンテンツの作成」「Launch Campaigns:キャンペーンの実行」「Measure & Analyze:効果の測定と分析」の5段階で実行する(図2)。Marketoではこの5段階のライフサイクルをサポートするABM機能のリリースを2016年の秋に予定しており、国内でも同時に利用できるようにする。基本的なMAにABMに特化した機能を付加するという。
利用者から見た変更点としては、アカウントマスターの登録機能、アカウントスコアリング機能、ダッシュボードの提供がある。アカウントマスターにキーアカウント情報を登録すれば、今までのMarketoの機能がリード単位ではなく、アカウント単位で使えるになる。
これによりキャンペーン実行状況のモニタリングと効果測定などがアカウント単位で可能になる。現在のWebコンテンツや広告のパーソナライゼーションはリード(個人)単位だが、アカウントを把握した上で使い分けができるようになる。さらにアカウントをブレークダウンすれば、リード単位での施策展開も可能だ。
このようにMarketoのABMは、既存のMAツールを追加・拡張する形式で新機能を実装する。「ABMは組織とプロセスに大きな変化を迫るが、MAと対立するものではない」と福田氏は説明する。
福田氏は五つのステップのうち、特に重要なのは「アカウントの特定」であると言う。「自社に高付加価値をもたらすキーアカウントは、セールスの勘と経験に頼るのではなく、データを基準にシステマティックに抽出するべき」とした。
そして、最後のフェーズである効果測定までのライフサイクルを運用するよう、業務プロセスを変えなくてはならないとも付け加えた。関係者全員が参加するコラボレーションを実現するために、テクノロジーがサポートする格好だ。