本連載では、全国の中小企業のみなさんがITを有効活用して、業務課題の解決や生産性向上を図れるようにするためのヒントを紹介していきます。日ごろ「我が社はITを使いこなせていないが、なぜだろう」「どうして我が社はITに投資しないのだろう」といった疑問を感じている方の参考となり、それがITを活用した生産性向上や収益拡大の一助につながれば幸いです。

 「取引先との仕事にITを活用できていない」という悩みをお持ちではないでしょうか。実は、ITで取引先との仕事をより早く、便利にしたいと考えつつ、「電話とFAXの世界」から抜け出せない企業は結構あるのではないかと思います。今回は、その理由を考えてみましょう。

生産性が著しく低い「電話での行き違い」

 以前、ある地方の企業に仕事を依頼することになり、見積もりを取ったときのことです。私の外出が多いためか、電話での行き違いが起こり、何度も折り返して電話する状況が続きました。その後、携帯電話で会話できたのですが、そこで先方から「見積もりはFAXで送ることになっているので、受け取ってほしい」という話になりました。ところがそのFAXのやり取りにも時間を費やしてしまい、結局見積もり依頼をしてから仮申し込みをするまでに3日を費やしました。この出来事があって、我々はコミュニケーションの時間と手間のロスが、今後この会社と仕事を進めるに当たって再び起こるのではないかと心配になってしまいました。

 そこで、同じ地域にある別の企業に相見積もりを取ってみることにしました。すると、この企業はものの15分で見積もりをメールで送ってきたのです。実はこちらの企業の見積もり金額は、最初に見積もりを取った企業の数倍でした。それでも結局我々は、最初の企業への仮申し込みを取り消し、後から高い見積もりを出してきた企業に仕事を発注しました。対応の速さを評価したのです。

 この結果からは、二つの事実を読み取れます。円滑なコミュニケーションがビジネスの成否を左右し得ること、そして自社における業務プロセスの都合が取引先の生産性を落とす可能性があることです。何度折り返し電話しても、相手が離席や会議、外出で捕まらないことはあります。タイミング良く折り返しの電話を受けることも容易ではありません。また、FAXでの申し込みや発注には通信代がかかります。電子メールであれば、そのコストを敢えて算出しなくてもよいでしょう。

 ではこれだけの違いがあるにもかかわらず、なぜ電話とFAXだけを使う仕事を変えられないのでしょうか?

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