本連載では、全国の中小企業のみなさんがITを有効活用して、業務課題の解決や生産性向上を図れるようにするためのヒントをお話ししていきます。日ごろ「我が社はITを使いこなせていないが、なぜだろう」「どうして我が社はITに投資しないのだろう」といった疑問を感じている方の参考となり、それがITを活用した生産性向上や収益拡大の一助につながれば幸いです。

 筆者は25年以上にわたって、IT業界に身を置きソリューション営業をしてきました。現在はシスコシステムズで、「地方創生ビジネス」と「中小企業向けビジネス」を担当しています。仕事柄、地方の中小企業の経営者と会話をする機会が多々あるのですが、その会話を通じてある課題を感じるようになりました。それは、ITの理解や活用に向けた取り組みに積極性が見られないということです。「経営者が以前にIT活用に関心を示し投資をしたが失敗に終わり、以降はITへの投資に難色を示すようになった」といった話をよく聞くのです。

 今回は、なぜこうした事態になるかを考えてみましょう。

提案されるがまま、自社に合わない高額の投資をした

 中小企業の経営者の平均年齢は、日本の総人口と同様に年々高くなってきています。東京商工リサーチの調査によると、2015年の全国の社長の平均年齢は60.8歳で、前年より0.2歳高齢化が進んでいます。社長が高齢化するほど経済環境の変化への対応が遅く、過去の成功体験へのこだわりや従来の営業モデルからの脱皮が難しく、業績低迷につながっている状況が伺えます。

 後継者育成の課題も、併せて考える必要があります。厳しい経営環境下での心配から、社長自身が後継者への事業承継をちゅうちょしている側面もあるようで、円滑な事業承継には高いハードルがあるのも事実だと思います。

 そして地方では、経営者の高齢化や後継者育成が進まないという傾向が都市部より強いといえます。さらに首都圏から離れていることよる情報不足という状況も相まって、ITによる業務支援についてはベンダーに提案されるがまま採用するケースも目立ちます。

 もちろん、提案されて採用したものが導入企業に適していて、うまく活用できるケースもあります。しかし一方で、現場のニーズや業務に合った選択ではなかったというケースも少なからずあるのです。それが「高度なパッケージソフトを使いこなせなかった」、「運用の負荷が重く、面倒を見切れなくなった」といった事態を招き、ひいては「使わなくなる」「いつまでも使えない」という結果に終わってしまうのです。

 その後、1度のみならず2度3度と「やはりITに投資しよう」という話が持ち上がったものの、初回同様間違った選択と導入を繰り返し、いずれも「使わない」結果に終わった例もあります。こうなるとIT投資がかなりの無駄になってしまい、本来期待していたコスト削減や売上向上にはつながりません。その結果、経営者がIT化に消極的になったというのが実態ではないでしょうか。

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