Bluetooth Low Energy(BLE)による近距離通信技術「iBeacon」を利用する例が、様々な分野に広がりつつある。代表例は小売り店舗などでのマーケティング用途だが、それだけではない。旅行者などへの道案内、さらには建設現場での作業支援など、新たな活用法に取り組む例が出てきている。
2016年2月4日、国土交通省は地下街を含む東京駅周辺で、屋内外シームレスなナビゲーションサービスの実証実験を始めた。同省が進める「高精度測位社会プロジェクト」の一環で、iBeaconを使った屋内電子地図や測位環境を整備し、その環境を活用する。
iBeaconはBLEを使って数メートル程度までの近距離の範囲内にある端末に対して情報をブロードキャストする技術。米アップルが開発したもので、iPhoneなどアップル製品の多くに実装されている。
仕組みとしては、自身のID情報をブロードキャストする送信機と、その情報を受け取る端末で構成される。端末はBLEでID情報を受け取ることで、送信機に近づいたことを認識できる(図1)。多くの場合、端末側で、送信機に対応した専用アプリを動作させておき、ID受信をトリガーに特定の情報を取得させる。
分かりやすい例は、小売り店舗での来店客へのキャンペーン情報配信や、ポイント情報の通知だろう。国交省の実証実験では、これを利用者の位置表示、目的地への最適ルート検索といったナビゲーションに応用している。旅行者などに向けた仕組みとして役立ちそうだ。
このために同省は、対象地域内に約300個の屋内測位用の電子機器(ビーコン)を設置。既設のWi-Fiアクセスポイントの情報も活用して、位置情報を把握できる環境を整備した。同時に、「ジャパンスマートナビトライアル版」というアプリも開発、公開した(写真1)。利用者は、大手町・丸の内・有楽町、銀座、八重洲の一部という、東京駅周辺のおおむね地下でつながった範囲で、屋外・屋内を問わず、自分の位置や、目的地までのルートを正確に把握できる。
この実証実験により国交省は、屋内電子地図の整備・維持・更新に必要な体制を検討する。さらに、測位機器の設置に関するガイドライン作成に向けて、整備すべき地物(施設の名称など)、測位機器の配置や適性に関する情報を整理するとしている。