920MHz帯は、2012年に総務省が国際競争力の強化の観点から法改正を行い、2.4GHz帯に加えて新たにISMバンド(Industrial, Scientific and Medical Band)として割り当てられた周波数帯です。ISMバンドとは主に医療、産業、科学分野などの用途に割り当てられた周波数帯域で、免許不要で使用できます。

 920MHz帯は1GHz以下の周波数帯のことを意味する「サブギガ帯無線」とも呼ばれています。Wi-FiやBluetoothで使われている2.4GHz帯は世界共通です。一方の920MHz帯は、国により使用できる周波数帯が若干異なるために、具体的な帯域数で呼ばずに、総称して「サブギガ」と呼ばれています。米国やアジアでも同じ周波数帯を利用できることから、今後IoT向け通信に関する市場での活性化が期待されています。

 日本では、1GHz以下の周波数帯として315MHz帯と400MHz帯が従来から使用されています。920MHz帯も315MHz帯と400MHz帯と同様に、一般的に特定小電力無線(特小または特小無線)とも呼ばれています。

長距離通信に向く920MHz帯

 データを送信する電波は基本的に、周波数が低いほうがより遠くに届くという性質を持ちます。ただし、その分伝送速度が遅くなり、同じデータ量を送るのに送信時間が長くなるために電力をより多く消費します。さらに周波数が低いと波長が長くなるので、信号を効率良く送受信するために大きなアンテナが必要になります。

 920MHz帯の優れた点は、より高い周波数帯である2.4GHz帯(高周波数)と比べると、波長が長いために電波の回り込み(回折と言います)に優れ、障害物に強く、より遠くにデータを送信できるところです。より低い周波数帯である315MHz(低周波数)と比較した場合は、送信距離的には劣るものの、アンテナは比較的小さくでき、送信速度を確保して省電力性を保てます。このように920MHz帯での長距離通信は、他の周波数帯よりも優位な点があります(図1)。

図1●電波が回り込みやすく障害物に強い920MHz帯
図1●電波が回り込みやすく障害物に強い920MHz帯
出所:グリーンハウス
[画像のクリックで拡大表示]

 920MHz帯は2.4GHz帯と比較して、同じ送信電力でも電波が良く飛ぶ特性があるため、センサーデータを比較的遠くまで飛ばす用途に活用され始めています。最近では長距離化が進み、見通し100kmの広い範囲での通信を行う装置も開発されています。

この先は日経クロステック Active会員の登録が必要です

日経クロステック Activeは、IT/製造/建設各分野にかかわる企業向け製品・サービスについて、選択や導入を支援する情報サイトです。製品・サービス情報、導入事例などのコンテンツを多数掲載しています。初めてご覧になる際には、会員登録(無料)をお願いいたします。