SaaS APIを活用する意味は大きく三つある。すなわち「安い」「早い」「うまい」だ。先進事例を通じてSaaS APIの使い方を紹介するとともに、どういったメリットが得られるのかを見ていこう。

 SaaS APIを“探して使う”と、その機能はスクラッチ開発で作らずに済む。そのことは「安い」「早い」「うまい」という三つのメリットをもたらす。

 安いとは、初期コストの低さだ。当然、SaaS APIを使う部分は開発コストが低減できる。加えて、SaaS APIの多くは、利用回数に応じた従量課金制で、初期費用が掛からない。

 早いとは、システムの開発期間を短くできることだ。SaaS APIは既に動いているSaaSと接続するだけだ。開発、設定、テストに掛かる時間を短縮できる。

 うまいとは、スクラッチ開発では難しい機能を実現できることだ。例えば、機械学習や音声合成、第三者が集めたデータへのリアルタイムのアクセス、などである。

 もちろん、SaaS APIが自社の要求に合うのが条件だ。しかし、SaaS APIの品ぞろえは急速に拡大している。要件に適合する確率は高まっている。

 本PARTでは、先進企業の活用事例から、なぜSaaS APIを活用するのか、活用すると何を得られるのかを見ていこう。

【安い】初期費用はゼロ

 「SaaS APIそのものの初期費用はゼロ。導入とテストに掛かった工数は、私と開発会社の2人が5日間作業するだけだった」(日本気象協会 事業本部 情報サービス部 情報システム管理課の緒方 優氏)。

 同協会は、気象情報サービス「MICOS」における運用システムに、電話/SMSのSaaS「Twilio」を活用している(図1)。この運用システムは、障害を検知するとTwilioのAPIを呼び出し、運用担当者の携帯電話に電話を掛ける。電話を受けた運用担当者は、出社したりリモート接続したりして障害復旧に当たる。「運用システムに電話機能を取り込むことで、常駐オペレーターの人数を従来の半分以下にできた」(緒方氏)。

図1 電話と連携したシステム監視を低コストで実現
図1 電話と連携したシステム監視を低コストで実現
日本気象協会は電話/SMS SaaS「Twilio」のAPIを使い、障害発生時に運用担当者に自動的に電話を掛ける仕組みを安価に開発した
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 方法としては、内線電話の交換機と連携したり、電話会社の専用サービスを利用したりする手段も検討したが、それらは初期費用が数十万~数百万円掛かる。運用システムと連携させるためのソフトウエアの開発費用も必要だ。開発には、電話特有のプロトコルを理解したエンジニアも必要になる。

 Twilioは、サービス自体には初期費用が掛からない。利用する電話番号の数や発着信数に応じた従量制の料金が掛かるだけだ。開発工数も小さい。電話発信ならHTMLに似た「TwiML」で数行の命令を書くだけで済む。開発者が好きなプログラミング言語で命令を書けるAPIライブラリもある。

 電話のプッシュ操作で着信を確認したり、合成音声を流したり、通話内容を録音したりといった、電話に対して付加的に必要な機能はTwilio側で実装済みだ。

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