ERP(統合基幹業務システム)で世界最大手の欧州SAPが、プロスポーツの世界で勝利の確率をITで高めることに躍起になっている。ITとスポーツはここ数年で一気に距離を縮め、各チームはビッグデータ分析やIoT(Internet of Thins)の活用に余念がない。

 実際2014年のサッカーワールドカップ(W杯)で優勝したサッカードイツ代表や、同国の有力チームであるバイエルン・ミュンヘンなどは、早くからSAPのデータ分析力を頼る。勝利の方程式を年々磨き上げ、世界各国の競合チームから注目を浴びている。

 2020年の東京五輪を控え、日本法人であるSAPジャパンも日本のスポーツ強化に動き出す。旗振り役が馬場渉バイスプレジデントだ。インメモリーデータベース「HANA」など最新のデータ分析技術がスポーツ業界に与えるインパクトを聞いた。

(聞き手は高田 学也=日経コンピュータ


IT企業であるSAPがスポーツ業界を支援している理由を教えてください。

写真●SAPジャパンの馬場渉バイスプレジデント
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写真●SAPジャパンの馬場渉バイスプレジデント

 SAPは常に、変化するリーダーたちをITによるイノベーションで支援し続ける会社だからです。ここ数年、世界各国のスポーツ業界では、IT革命による変化をチャンスと捉え、売上アップやファン拡大などに結びつけようと試みる動きが急増しています。具体的な成果を出しているところも少なくなりません。

 テクノロジーを駆使して経営のグローバリゼーション化を支援するのは、SAPの本懐。今まで20以上の業界に対してERPを使ってやってきたことをそのままスポーツの世界にも当てはめれば、イノベーションが起こせる。そう信じています。2020年の東京五輪を前に、日本のスポーツ業界でも空気が変化しつつあるように肌で感じています。

具体的な支援策は。

 スポーツ業界向けには、大きく三つの支援を行っています。一つはビジネスオペレーション(経営支援)、もう一つはファンエンゲージメント(ファン交流拡大)、そして最後がプレーヤーおよびチームパフォーマンス(選手・チーム力強化)です。

 最初のビジネスオペ-レションは、一般企業に当社が提供しているサービスとほぼ同じです。昨今、トップクラスのサッカークラブになると、年間売上高が500億円規模になり、中には株式を上場して時価総額が6000億円に上るところもあります。当然普通の企業と同じ効率的な経営体制が求められます。

 経営支援ではドイツのサッカークラブ、バイエルン・ミュンヘンとはもう20年近いお付き合いがあります。日本でも球団を抱える企業数社が当社のERPを導入しており、グループ経営の一環として球団でもERPを活用しています。

 海外では一歩進めて、リーグ単位やフェデレーション(国際的な連盟)単位で経営支援を請け負うこともでてきました。

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