スマートグラスに関しては、実は業務用の製品が先行して普及の兆しを見せている。スマートグラスには映像や写真、テキストなど、さまざまな情報を表示できる。しかもハンズフリーの状態になるため、製造や物流、保守などの現場で作業支援デバイスとして採用する流れが加速しているのだ。

 具体的な利用シーンとしては、例えば、工場の製造現場における組み立て作業の支援などがある。ディスプレイに操作手順を示すマニュアルを表示し、さらに音声や映像などで手順を解説するなどといった使い方がある(図1)。

●遠隔作業や組み立て作業などの支援
●遠隔作業や組み立て作業などの支援
図1 業務用のスマートグラスは、映像や音声、テキスト表示などの機能で作業支援を行う
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 また、タブレットなど外部デバイスの接続に対応していれば、現場の映像を共有しながら、遠隔地にいる社内の熟練者からアドバイスを受けるといったことも可能だ(図2)。特にハンズフリーで情報を視認できるメリットは大きく、高所など常に両手を使って作業をする現場ではかなり重宝する。

図2 USBカメラなどの機器と組み合わせることで、遠隔地とリアルタイムに映像や情報を共有できるのもメリット
図2 USBカメラなどの機器と組み合わせることで、遠隔地とリアルタイムに映像や情報を共有できるのもメリット
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 最近は特定の分野に特化した製品も登場している。医療分野向けのスマートグラスでは、ディスプレイで超音波エコーの映像やX線画像を確認しながら処置を行うといった活用事例もある(図3)。製品によっては、スマートグラスの操作自体にも配慮されており、ウエアラブルキーボードや音声コマンドにも対応している(図4)。

●医療現場に特化したモデルも登場
●医療現場に特化したモデルも登場
図3 ブラザー工業の「AiRScouter」シリーズからは、医療用に特化したスマートグラスが登場。ミスの許されない現場でも、効率的な医療作業支援を実現するという
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●作業しながら操作しやすいように工夫
●作業しながら操作しやすいように工夫
図4 富士通の製品は、付属のウエアラブルキーボードや音声コマンドを用いて、作業マニュアルをその場で見たり、数値を入力したり、あるいはカメラで撮影したりできる
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 企業の作業現場では熟練した労働者が慢性的に不足している。今後も業務用スマートグラスのニーズはますます高まっていくだろう。業務用のスマートグラス市場には、国内メーカーではブラザー工業、富士通、セイコーエプソンなどが参入している。また、海外メーカーも参入しており、将来的にも有望な分野とみられている(図5図6)。

●有望な分野だけに新興メーカーも参入の動き
●有望な分野だけに新興メーカーも参入の動き
図5 テレパシージャパンでは、現在開発者向けモデルを販売中。目下、一般販売を目指して開発が進んでいる
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図6 米国のスマートグラスメーカーであるビュージックスも日本法人を通じて業務用分野に進出。スマートグラス本体に加え、関連アクセサリーも販売している
図6 米国のスマートグラスメーカーであるビュージックスも日本法人を通じて業務用分野に進出。スマートグラス本体に加え、関連アクセサリーも販売している
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