前回はマーケティング担当者とエンジニアが協業していくために、課題をビジュアル化して共通理解を深め、合意に基づく目標設定を行うことの重要性について話しました。加えて、異なる役割を担うメンバーが業務理解を進めながら合意を形成する手法として「コンセプトダイアグラム」という方法論を紹介しました。
連載3回目となる今回から、さらにコミュニケーションを円滑にするため、マーケティング担当やデザイナーなどのITリテラシーを自然に高める方法について考えてみます。エンジニアにとってはお馴染みの開発やコミュニケーション系ツールを社内で導入することで、非エンジニア系メンバーに、さりげなく使い方を伝授していきます。
eメールは死んだ?メール多用による弊害
eメールはインターネットの歴史の中で最も古いアプリケーションの一つであり、多くの人たちによって毎日使われています。打ち合わせ日程の調整から資料の共有、ランチや会合のお知らせ、ちょっとした通知まで、ありとあらゆる種類の連絡をメールで行うことも多いことでしょう。
コミュニケーションの側面からは、電話のように相手の時間を自分の都合で拘束することがない、複数メンバー間の共有が楽、やり取りの記録になるといったメリットがあり、気軽に多用しがちです。
ところが、eメールは大きな進化を遂げることなく誕生から20年近くが経過していて、メッセージングのシステムとして抱えている欠陥を露呈しています。もう10年近くも前から、インスタントメッセンジャーやRSS、SNSなどのコミュニケーション系ツールやテクノロジーが登場するたびに「Email is Dead.」(メールは死んだ)というフレーズで議論が交わされてきました。
購読しているメルマガやDM(ダイレクトメール)、自分のアドレスがCCに入っている(自分あてではない)メールも含めると、日に何百通ものeメールを送受信している人も少なくありません。メールの利用機会や受信数が増えれば増えるほど、「大事な連絡事項を記載したメールを見つけられない」という問題が発生してきます。
件名や送信者を覚えていればキーワードで検索できますが、誰がいつ送信したのか、どんな言葉を使っていたのか、どのフォルダ(タグ)に分類したのか、などがあいまいだと、検索してもなかなかヒットしません。古いメールに対して返信して全く別のトピックを始める場合など、件名が正しく内容を表していないこともあります。「清水です」「昨日はありがとうございました」などと曖昧な件名をつけたり、件名で意図した内容とは別のトピックを本文に混ぜることもあるので、件名はあてにならないものになっています。