2017年ももうじき終わりですが、今年は事業縮小や事業拡張などの事業変更をした企業を多く目にしました。これは企業が市場の変化に対応するためのもので、それ自体は問題ではありません。ただし、近年の事業縮小や事業拡張は、必ずしもその会社がそれまで持っていた「ブランド」やサービスの認知拡大には至っていない例が多いように感じられます。

 ブランドはこれまで、B2Cビジネスを中心に考えられ、活用されていた概念でした。しかし企業のビジネスが成熟し、それぞれに差異がなくなってきた今、B2Bでもブランドについて正面から考えるべき時期になったのではないでしょうか。

事業を縮小した東芝と事業を拡張したKDDI

 最近起こった事業縮小の例としては、真っ先に東芝が思い浮かぶのではないでしょうか。東芝は債務超過に陥ったあと、やむを得ず半導体事業やテレビ事業の売却を検討しています。

 この話を聞いたとき、多くの方は「東芝に残る事業は何だろう」と思ったはずです。つまり東芝の例は、事業売却が企業のブランドを弱めたといえるでしょう。

 一方で、KDDIが英会話教室などを展開するイーオンホールディングスを買収したというニュースもありました。こちらは、事業拡張の例です。KDDIが本業の通信領域に加えて「非通信領域」業務を拡張するために、教育事業を買収したのです。

 KDDIはこれ以外にも「非通信領域」の拡張として、チケット販売大手の「ぴあ」やインターネット生命保険会社の「ライフネット生命」の出資比率引き上げも発表しています。これは、KDDIの事業多角化としては経営に貢献するかもしれません。

 しかしKDDIという企業イメージが拡張されるよりも、むしろイメージがぼやけたように感じられたのは私だけでしょうか。「通信企業からライフデザイン企業への変革」という言葉を使って新たな事業を打ち出していますが、これからの展開を誤るとKDDIのブランドを大きく毀損することにもなりかねません。

ブランドというのは、名前ではない

 「東芝」や「KDDI」は会社の名前であり、ブランド論でいうなら「コーポレートブランド」でもあります。ここで、もう少しブランドについて考えてみたいと思います。

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