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 矢野経済研究所は生命保険領域における「InsurTech(インシュアテック)」市場の調査結果を発表した。インシュアテックとは保険(インシュアランス)と技術(テクノロジー)を組み合わせた造語。ITを活用して、従来の保険技術では提供できなかった新たな保険商品やサービスを開発したり、保険業務を高度にしたりする取り組みを指す。

 2016年度の国内インシュアテック市場は460億円の見込み。けん引役は人工知能(AI)だ。保険金や給付金の支払い、引き受けの査定といった生命保険の業務に、AIを導入する動きが進んだ。2017年度以降もAIの活用範囲が広がり、2020年度には市場規模は1100億円に拡大すると予測する。

 2017年度以降に市場を率いるAI以外の領域としては、健康増進型の保険や疾病管理プログラムが期待できるとする。開発の主体は国内の大手生命保険会社だ。

 加入者の健康診断データに加え、ウエアラブル端末やスマートフォンアプリを使って集めた日々の歩数や心拍、体温、睡眠といったライフログデータを分析。健康増進を促す保険商品につなげる。中央省庁や地方自治体の持つ公共データを公開する動きが、データ収集を促進しそうだ。

 インシュアテック市場の拡大に向けた課題の一つは法制度の整備だと指摘する。FinTech分野は市場拡大を後押しする法整備が進む一方で、インシュアテックには保険業法などの改正に向けた動きがないとする。

 技術革新に重要な、スタートアップ企業を支援したり育成したりする動きも限定的という。企業間連携や保険商品の開発を促すAPI(アプリケーション・プログラミング・インタフェース)の整備も重要と指摘している。