前回の記事では、B2Bにおけるデジタルマーケティングへの取り組みについて考えてみました。
本記事ではデジタル技術によってマーケティングが大きく変わりつつある今、マーケティングの専門家としてスキルを高めるために、どのような取り組みが必要か考察してみます。
B2Bマーケティングに必要なスキルとは
B2Bでマーケティングを実践するために必要なスキルとその磨き方を考える前に、スキルとは何かを考えてみます。そもそも知識とスキルは似ていますが、異なるものです。一般的に以下のように区別されています。
- 知識:ある専門領域において、仕事に利用可能な、知っていること
- スキル:知っているが、体得するまでに訓練が必要で、汎用的に使える能力
つまり、「知識」は頭で覚える(読んだり聞いたりして習得する)ものであり、「スキル」は体で覚える(実践して習得する)ものです。
「知識」は言語化され、形式知化されているので、「見える」ものです。しかし、「スキル」の根本的なところは言語化するのが難しく、「暗黙知」のままなので、「見えない」ものです。したがって、「知識」は本やビデオから容易に得ることができますが、「スキル」は本からだけで習得するのは難しいものです。
例えば「コミュニケーションスキルの本」を読んで、コミュニケーションスキルを知ることはできても、コミュニケーションスキルを身に付けることはできないのです。コミュニケーションスキルは、コミュニケーションを通して実践し、磨き磨かれ、試行錯誤を繰り返しながら体得するしか道はありません。仮説を立てて実施してみて、そこから学びを得ることで、知識はスキルとなり蓄積されていきます。
B2Bマーケティングの基本スキルを突き詰めると、以下の二つに大別できます。
- マーケティングプランを作成するスキル
- マーケティングを実行するスキル
いったんマーケティングプランが出来上がってしまえばしめたもの。マーケティングプランを実行するスキルを持った外部リソース(イベント会社やWeb広告代理店、テレマーケティング会社など)を活用して、それほどスキルのない新人マーケターでもマーケティング活動を実施できるものです。
ただし、それはマーケティングを作業として実施しているだけになります。その結果、セミナーにはたくさんの来場者があって盛況だったが、案件につながるものは皆無だったという、本末転倒なことが起きかねません。優れた設計があってこそ、ベテラン職人の腕が発揮できると考えると、より重要なスキルはマーケティングプランを組み立てる能力といえるでしょう。
デジタルがどれだけ重要度を増していても、この基本スキルが大きく変わることはありません。ただし、我々のような外資系の日本法人でマーケティングを手がける場合と、日本企業の本社で製品の戦略・企画レベルからマーケティングとして参画する場合では、期待される役割が異なります。