ダッソー・システムズは、2012年から「3Dエクスペリエンス」を提唱し、自らを3Dエクスペリエンス・カンパニーと定義しています。これまで3D技術を核としてモノ造りを支えるソフトウエア製品群を提供してきました。
具体的には、3次元設計のためのCAD(CATIAやSOLIDWORKS)やバーチャル検証のためのシミュレーション(SIMULIA)、生産のための実行管理(DELMIA)、製品ライフサイクル管理(ENOVIA)など、いずれも「商品」としての「モノ」を作る企業が競争力を高めるために必要とするソフトウエアです。これらを連携させることで、「モノ」を超えた「エクスペリエンス」を開発し、市場に投入できるようになります。
お客様は「エクスペリエンス」を買っている
私たちはモノ作り企業を応援していますが、モノ作り企業のお客様である消費者は、実は「モノ」や「サービス」を買っているのではありません。モノやサービスから得られる「エクスペリエンス(経験、体験)」を買っているのです。
ディズニーランドがなぜ他の遊園地と差別化できているのか、お客様の行動の理由を解き明かした書籍『The Experience Economy』(日本では訳書『経験経済』として刊行)をジョセフ・パインとジェームス・ギルモアが出版したのは1999年のことです。この「エクスペリエンス」という概念は、実例には事欠かないくらい当然のものとして定着してきました。
例を挙げると、バルミューダのトースターは、すっかりコモディティ(生活必需品)化したと思われていた白物家電市場に2015年に投入されてから、またたく間に「高級トースターという新たな市場を生み出しました。まるで焼き立てのようなおいしいパンを食べられるという体験(エクスペリエンス)をアドバンテージにしており、トースターに従来期待されてきた機能やデザインでは勝負していません。
それでも、安売りされるトースターの10倍以上の値段となるバルミューダ製品は、飛ぶように売れています。この事実は、顧客が「製品」ではなく「サービス」でもなく「エクスペリエンス」を買っていることを示しています。
コモディティから製品、サービス、そしてエクスペリエンスへと進化するのは、経済価値の本質です。しかし、優れた製品やサービスであっても常に「コモディティ化」の恐怖と戦っています。