2016年1月28日に東京・お茶の水で開催された「ITインフラSummit 2016」。インフラ活用の先進企業や、インフラ技術の専門家による多数の講演のうち、本稿ではネットワーク基盤の構築や活用、最新のソリューションに関するものを中心に紹介する。

 特別講演ではJR西日本が進めている、新幹線乗務員によるiPad活用と、それを支えるネットワーク基盤作りについて報告。続いてシーディーネットワークス・ジャパンが中国でのコンテンツ配信ビジネスに役立つノウハウとソリューション、リバーベッドテクノロジーがWANをLAN並みのレスポンスで使うための最新手法、KDDIがSDN技術をフル活用したネットワークインフラ作りについて、それぞれ解説した。

特別講演:JR西日本
iPadによる山陽・北陸新幹線の顧客サービス向上を支えた基盤とは

 「ITインフラSummit 2016」の特別講演「B-7」トラックでは、JR西日本の小山秀一氏が登壇。同社が山陽・北陸新幹線の乗務員にiPadを配布した背景と、その効果を語った。

JR西日本 IT本部 IT計画(運輸系)担当課長 小山 秀一 氏(撮影:海老名 進)
JR西日本 IT本部 IT計画(運輸系)担当課長 小山 秀一 氏(撮影:海老名 進)

 JR西日本は業務オペレーションやサービスの品質を高める目的で、山陽・北陸新幹線の乗務員全員にiPadを配布した。山陽新幹線は2015年1月から約900台、北陸新幹線は2015年3月から約200台を配布した。

 iPad導入の狙いは大きく3つあった。乗客への情報提供を強化すること、異常時の対応能力を高めること、規程類を電子データ化して乗務員の携行品を減らすこと、である。

アプリで運行状況などを即時把握、顧客満足度も高まる

 乗客への情報提供については、顧客満足度を上げるために、いくつかのアプリケーションを用意した。

 「列車運行情報アプリ」を使うと、列車が遅れている時に、リアルタイムに運行状況を知ることができる。「列車在線情報アプリ」は、運転を再開した時に、それぞれの列車がどこにいるのかを線路図上で可視化できる。いずれも、問い合わせへの対応や車内放送などに利用できる。

 「訪日顧客案内アプリ」は、外国人の乗客が自分で操作して、忘れ物や待ち合わせ場所が分からないといった多様な問題を解決できるアプリである。様々な言語に対応しており、日本語も一緒に表示するので、外国人の乗客が何を調べているのかが、側で対応する乗務員にも分かる。

 異常時対応の強化策としては、車両マップを電子データ化してiPadに収録した。例えば、床下配置マップの画面をタッチすれば細部まで確認できるので、迅速に異常の原因を特定できるようになった。

 iPadのカメラや通信機能によって、遠隔地にある指令拠点との間で画像データを共有することも可能である。これにより、あたかも熟練した社員が現場にいるかのように、的確な作業指示を受けられるようになった。

 携行品の削減については、乗務員が携行している規程類を電子化してiPadに格納。iPadの導入前は、運転士で3キログラム、車掌で2キログラムの規定類を常時持ち歩いていた。電子化により、改正時の差し替え作業もダウンロードするだけでよくなった。

安全と使い勝手を両立したiPadの利用環境をSDNサービスで実現

 iPadの利用環境としてネットワークシステムの整備も大きな課題だった。結果的に同社は、キャリアが提供するSDN型のネットワークサービスを採用した。SDN機能によってネットワークの追加/分割/統合が容易になっており、ネットワーク内で使えるファイアウォール機能など、セキュリティも備わっていたことから決めたという。

 ネットワークサービスの選定には、大きく3つの要件があった。1つは、閉域網によってネットワークの機密性を確保しつつ、iPadから安全にリモートアクセスできること。2つめは、モバイル端末管理(MDM)によってiPadの紛失対策などを実現することである。3つめは、セキュリティを確保しつつ使い勝手を損なわないことである。がちがちに縛るのではなく、取り扱う情報のレベルに応じてクラウドサービスなどを柔軟に使い分ける仕組みが必要だったという。

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