2016年1月28日に東京・お茶の水で開催された「ITインフラSummit 2016」。インフラの有効活用に取り組むユーザー企業や、ソリューションを提供するベンダーの専門家による多数の講演のうち、本稿ではストレージを中心としたデータ基盤の話題を紹介する。

 特別講演では、T-MEDIAホールディングスが同社のインフラ刷新の経緯と、ストレージ性能のボトルネック解消の工夫を紹介。続くソリューション講演では、ヴイエムウェアとティントリジャパンの2社が、仮想化環境におけるストレージの要件と、それを実現するインフラの構築に向けた最新のソリューションについて解説した。

特別講演:T-MEDIAホールディングス
VMware仮想化でリソース効率向上、ストレージ管理からも開放

 「ITインフラSummit 2016」のソリューション講演「B-4」トラックでは、T-MEDIAホールディングスの畝岡健氏が登壇。仮想化基盤の導入から再構築まで、同社が取り組んだIT基盤の刷新プロジェクトについて説明した。

T-MEDIAホールディングス IT本部 本部長 畝岡 健 氏(撮影:海老名 進)
T-MEDIAホールディングス IT本部 本部長 畝岡 健 氏(撮影:海老名 進)

 同社はカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)グループに属しており、ネットによるDVDなどのレンタル「TSUTAYA DISCAS」や、映像配信の「TSUTAYA TV」などのデジタル事業を手がけている。これまでに2回、IT環境を大きく改変してきた。2011年にはデータセンターを統合するとともにVMware仮想基盤を導入。2016年にはVMware仮想基盤を再構築した。

第1段階:データセンターを統合、VMware仮想基盤を導入

 同社は2011年にVMware仮想基盤を導入すると同時にインターネットサービスを支える5カ所のデータセンターを1つに統合した。それ以前は5カ所で計48ラック、物理サーバー400台を抱えていたが、VMware仮想化ソフトとブレードサーバーによって15ラック170台まで削減した。

 それから約5年が経過して、新たな問題が発生した。仮想化ソフト「VMware vSphere 4」のサポート切れ問題と、性能の問題である。性能面では、仮想マシンのイメージを格納していた2台のNASストレージが“悲鳴を上げた”。仮想マシンイメージ数は商用サービスだけで600個に達していた。

第2段階:「VM専用」投入でストレージの性能問題と運用負荷を解消

 2016年のインフラ再構築で、サーバー性能は150%向上し、ストレージI/O性能は2倍以上に、ストレージ容量は19Tバイトから32Tバイトに増えた。サーバー台数は、2015年時点で17ラック219台だったのを10ラック117台に削減した。ラック本数は42%減、サーバー台数は49%減である。

 サーバーは従来と同様に米Hewlett Packard Enterpriseのブレードサーバーを、SANストレージも同じく米EMCの統合ストレージを採用した。仮想マシンイメージを格納するストレージは、それまでストレージ性能に悩まされた経緯から、米TintriのTintri VMstoreを採用した。

 畝岡氏は、今回のインフラ再構築におけるポイントの1つがTintri VMstoreの採用であるとし、「ストレージの面倒を見なくてよい。運用していることを忘れるくらい何もしていない」と述べた。Tintri VMstoreではボリュームは1つしか存在せず、仮想マシン単位で性能を管理できる。このため、仮想マシンごとにボリュームを確保する必要がなくなり、ボリューム管理作業から解放される。

 また今回、仮想化ホストの負荷を監視して自動的に仮想マシンを別ホストに移動し負荷分散を図ることができる「vSphere Distributed Resource Scheduler(DRS)」機能を採用。従来はサービスごとに仮想化ホストを割り当てていたが、そこまでの必要性はなかったので共存させることにした。これにより、リソースの共有率が高まったという。

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