「顧客のデジタル体験を向上するため、伝統的な銀行のイメージを打ち破る“スーパースターDJ(ディスクジョッキー)”というビジョンを掲げた」
英国のメガバンクRoyal Bank of Scotland(RBS)で、デジタルアナリティクス統括責任者を務めるジャイルズ・リチャードソン氏は、Webサイトの最適化を通じたデジタルマーケティングの取り組みについてこう語る。同社は1727年に英国王ジョージ1世の勅許により設立した約300年の歴史を持つ名門銀行だ。世界中に2400万の顧客を抱え、英国女王もVIP顧客として名を連ねる。
リチャードソン氏がスーパースターDJというビジョンを打ち出した理由は、銀行という業務の性質上、デジタルマーケティングに保守的な組織を変えたいとの思いからだ。リチャードソン氏は同社のWebサイト最適化における過去の状況について「勘に頼って改善策を打っていた。施策の効果を判断する仕組みや十分なデータも無く、打ち上げ花火を続けているようだった」と振り返る。
状況打開のために、顧客が商品やサービスの購入に至るまでの流れ(カスタマージャーニー)を管理するジャーニーマネージャーという役職を設置。コンテンツ管理用に米アドビシステムズのCMS(コンテンツ・マネジメント・システム)を導入した。
アクセス解析やWeb広告などで利用しているHTMLタグを管理するタグマネジメントツールを使い、タグの一元管理も実現。サイトの利用状況などの可視化には、各種データを整理・分析するライブデータダッシュボードを140種類用意した。
これらの施策を通じて顧客の行動を分析し、サイトの最適化につなげていった。「Webサイトに表示する言葉の使い方やレイアウトなど、ちょっとした点を変更するだけでも利用率が2~3割増えた」(リチャードソン氏)と効果を挙げる。