「アカウントベースドマーケティング(ABM)」という言葉。日々、マーケティング戦略の最新情報にアンテナを張っていらっしゃるみなさんは、この言葉をどこかで聞いたこと、目にしたことがあるのではないでしょうか。今まさに欧米マーケターの間でホットになっている言葉ですね。実は意外とその歴史は古いABMが、なぜ今こんなに注目されるようになってきたのでしょうか。いくつかの記事からその背景を探ってみました。

 ABMは一般的には「マーケティング活動を”アカウント”という、より具体的な対象に括り直し、その観点からマーケティング活動を立案・実行する手法」(http://itpro.nikkeibp.co.jp/atclact/active/15/100500112/012500003/ より)などと言われています。簡単に言うと「自社が攻め込みたい(大きな売り上げが見込める)顧客に特化したマーケティング活動」という概念です。

 もともとは2000年代はじめに、英国のマーケティングコンサルティング会社である「ITSMA(http://www.itsma.com/)」が提唱したのが始まりと言われています。こう言うと、なんだか敷居の高いもののようにも聞こえてしまいますが、そんなことはありません。むしろ、日本のB2B市場を中心とした企業には、上顧客(未来の上顧客も含む)にはそれ相応に密なコミュニケーションを行う文化があるので、欧米よりもなじみやすい概念と言えます。ただ1点これまでと大きく違う点は、今までは営業部門のマンパワーに頼っていた顧客の購買動向や興味範囲の察知を、デジタルという新たなルートを通じてマーケティング部門が行えるようになった、ということです。

 ABMがにわかに脚光を浴びるようになった背景のひとつが、まさにこの点だと考えられます。これまでは難しかった個人単位のアクセス解析や、それを用いたリアルタイムのコンテンツの出し分けがデジタルツールによって可能になってきたことで、ABMが実践的なものになってきました。

http://www.inc.com/jeremy-goldman/do-these-6-things-to-master-personalized-marketing.html

 こちらの記事はパーソナライズを主眼に必要な6つのポイントが書かれていますが、ABMの概念を用いたコンテンツ作りの際にも参考になります。6つのポイントのひとつに挙げられている「顧客ごとに異なるカスタマージャーニーに沿ったマーケティング戦略やコンテンツの作成」はABMにおいても重要な要素です。また、いくらデジタルツールが進化したとはいえ、B2B市場での購買行動は営業部門が関わらずには完結しません。「デジタルを使う、しかしデジタルだけではいけない」と指摘されているように、デジタルマーケティングの施策を営業部門とうまく連携する体制や仕組みも、今後はますます重要になってくるでしょう。

 ABMが注目されるようになった背景のもうひとつに、より投資対効果の高いコンテンツの作成が求められるようになったことがあげられます。コンテンツの量より質に、注力ポイントが移ってきたわけです。こちらの記事でも2016年はコンテンツの量より質が重要視されるようになる、と答えているコンテンツマーケティングの専門家が多く紹介されています。
http://www.digitalinformationworld.com/2016/05/infographic-19-experts-share-their-content-marketing-predictions-for-2016.html

 コンテンツの質の定義もさまざまですが、ビジネスに利用するコンテンツは、より多くの売り上げに結びつくかどうかが重要視されるのは言うまでもありません。そこで、最も大きな効果を得られそうな顧客の購買動向に合わせてコンテンツを作成する、というABMの概念が必要になってきます。

 ただ、ここで気をつけたいのは、特定顧客の購買行動に寄り添うABMの場合、投資対効果は一般的に用いている四半期ごとの指標では計りにくいということです。何億円、何十億円というビジネスを発注する顧客が、四半期ごとにいつもそれだけの投資をし続ける、というのはあまりに非現実的です。こちらの記事では、ABMの概念を用いたマーケティング活動を行う際は、評価の項目や期間についてもマーケティング部門主導で注意して設定する必要がある、と指摘しています。
http://www.itsma.com/so-you-want-to-deliver-marketing-roi/

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