システムが停止してしまうと、ビジネスの現場への影響は避けられない。影響を最小限にするには、利用部門との適切なコミュニケーションが肝要となる。初期段階のコミュニケーションをどのように取るべきか、伝えるべき情報とその順番を解説しよう。
障害発生に激昂したユーザーにまくし立てられ、ひたすら頭を下げ続ける―。システム障害は運用担当者にとって、身が凍る思いになる事態だ。こうした状況を何度か経験すると、「いかに利用部門に怒られないようにするか」を目指して、謝罪のテクニックに走りたくなる。
しかしユーザーの怒りは、謝罪のテクニックを凝らしても、収まらない。なぜなら、ユーザーが怒りを爆発させるのは謝罪の仕方に対してではなく、必要としている情報が得られないことに対してだからだ。
「怒られたくない」という考えは、システム提供者の目線に過ぎず、ユーザー視点が欠けている。こうした発想は捨てて、ユーザー視点で「ビジネスへの影響を最小限にするのは、どういった情報が必要なのか」を考えた方が建設的だ(図1)。
これは、通勤電車が突然停止するトラブルに遭遇した状況を想像すると、理解できる。「朝の忙しい時間帯に申し訳ございません」という謝罪のアナウンスが何度も繰り返されるが、状況の進捗はいつまで経っても報告されない。乗客としては、迂回路線に切り替えるか、動き出すのを待つのかを判断したい。だが、必要な情報が提供されず、謝罪が繰り返されると、よけいに苛立ってくる。
利用部門にとって、システムの停止はIT上のトラブルではなく、ビジネス上のトラブルである。まずはIT部門による復旧に期待するが、停止が長期に及びそうなときは代替策に切り替えたい。そして、どういった代替策が考えられるのか、それをどのタイミングで実行するのかを判断したがっている。
「判断の材料を適切に提供する」。これが、障害発生時のコミュニケーションで最も重要なことになる。