2015年10月26日、大阪市のハービスHALLで開催された「ITインフラSummit 2015大阪~安・速・快のシステム基盤を創る~」の講演の中から、プライベートクラウド基盤に関わる2本の概要を報告する。

 特別講演では住友生命保険の汐満達氏がプライベートクラウドの段階的な導入の道のりと、その効果について語り、ソリューション講演では、ティントリジャパンがサーバー仮想化環境に特化したストレージ製品の特徴について解説した。

特別講演:住友生命保険
業務の重要度で160システムのサービスレベルを定義、コストを4割減へ

住友生命保険 情報システム部長 汐満 達 氏
住友生命保険 情報システム部長 汐満 達 氏

 住友生命保険の情報システム部長である汐満達氏が特別講演に登壇。同社が2011年から取り組んでいるプライベートクラウドについて、設計のポリシーや工夫点を解説した。

 同社がプライベートクラウドへと舵を切ったきっかけは、2010年にシステム企画室を東京に設置したことである。当時、汐満氏が情報収集のために参加したセミナーは、クラウドや仮想化といったテーマ一色だったが、住友生命保険では個別システムが乱立していた。これを改善してコストを削減しようと考えた。

 それまで仮想化に取り組んだことがなかった同社はSIベンダーとしてNEC、そのほかヴイエムウェアやEMCジャパンのコンサルタントにサポートを依頼。検討の結果、まずは業務に応じてサービスレベルを階層化することを決めた。階層化によって投資を適正化した上で、リソースをプール化してコストを削減する狙いだ。

 2011年のフェーズ1では、最初の3カ月で、ビジネスインパクト分析、インフラに必要なサービスレベル分析、インフラの現状分析、必要なサービスレベルと実態のギャップ分析、などを実施。その後、ポリシーの設計、標準化の検討、移行計画の立案、コストシミュレーションなどに取り組んだ。

業務の重要度に合わせてサービスレベルを定義

 最初に取り組んだビジネスインパクト分析では、「各業務が停止した時に、どれだけ影響があるか」と、「どの程度早く復旧しなければならないか」という2軸でインパクトを分析した。利用者は誰なのか、業務の特性はどうか、利用者の人数/件数、などの要素で影響度を測った。

 サービスレベルは、当初は4段階だったが、最終的には「重要なシステム」と「重要ではないシステム」の2つにした。システムの復旧に要する時間は、重要なシステムなら1時間以内、重要ではないシステムなら半日から1日で復旧する。同社が抱える約160の業務システムについてサービスレベルを定義している。

 必要なサービスレベルと実態のギャップ分析では、業務の重要性と現状のインフラのギャップを分析した。性能や可用性が足りていないものや、過剰なものを一覧表にまとめた。

システム更改の度にインフラを見直し、3~5年でコストを4割削減

 2014年から始まったフェーズ2では、アプリケーションの更改に合わせ、コスト削減策を実施していった。個別システムで稼働するアプリケーションの更改時にインフラ部分のスペックを順次見直し、コストを削減する。この取り組みにより、今後3~5年でインフラにかかるコストを4割削減することが目標だ。

 インフラ最適化の次期構想では、コストがかさんでいるUNIXサーバーの利用を極力やめ、x86系サーバーに置き換える。一部、メインフレームと通信する部分にはUNIXが残るが、それ以外はx86に集約する。その上で仮想サーバーを集約する。

 OS/ミドルウエアは、LinuxやOSSでまかなう。Apache TomcatなどのJavaアプリケーションサーバーを利用する。DBMS(データベース管理システム)については、Oracle Databaseを1つに集約してマルチテナント型で運用することを検討する。DWH(データウエアハウス)系のシステムは、メインフレームやOracle Exadataなどを使い、OLTPとOLAPの統合などを検討する。

 さらに将来のビジョンとしては、住友生命保険グループ全体でリソースを統合する。現状はグループ会社それぞれが個別最適なシステムを構築しているので、まずはインフラの構築ポリシーを標準化することからスタートする予定だという。

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