2015年10月26日、大阪市のハービスHALLで開催された「ITインフラSummit 2015大阪~安・速・快のシステム基盤を創る~」の講演の中から、データ基盤にかかわる3本の概要を報告する。カカクコムでインフラ基盤を担当する長谷川知彦氏による基調講演のほか、日本IBM、東京エレクトロンデバイスが、各社の最新ソリューションの特徴を紹介したソリューション講演である。

基調講演:カカクコム
プライベートクラウドはパブリッククラウドよりも安い、フラッシュで性能も確保

カカクコム プラットフォーム技術本部 システムプラットフォーム部 第1インフラサービスチーム 長谷川 知彦 氏
カカクコム プラットフォーム技術本部 システムプラットフォーム部 第1インフラサービスチーム 長谷川 知彦 氏

 基調講演には、カカクコムでインフラ基盤を担当する長谷川知彦氏が登壇した。同社は、価格比較サイトの「価格.com」と飲食店情報サイトの「食べログ」を筆頭に、各種のWebサイトを運営している。

 これらのインフラ基盤として同社がプライベートクラウドを構築したのは2013年のこと。サーバー2台、ストレージ1台、スイッチ1台で構成するユニットを2系統用意した。2015年3月にはスペックを高めた第2世代のプライベートクラウドを追加。こちらは、サーバー4台からオールフラッシュストレージ(EMC XtremIO)にアクセスするユニット構成とした。

 長谷川氏は、プライベートクラウドを「仮想環境であり、インフラのリソースを共有して使いやすくするもの」と定義する。特に、効率性と柔軟性を持ち合わせた上で運用性を確保する、というスタンスを大切にしている。講演では、イベントのテーマにもなっている、(1)安心・安全(セキュリティ、BCP)、(2)速度、の2つの切り口で、同社のプライベートクラウドの工夫点と特徴を解説した。

5年間使うならパブリッククラウドよりも安い

 (1)の安心・安全を実現するには、効率性と運用性が重要であると長谷川氏は指摘する。例えば、利用できるリソースに無駄がないこと、コストパフォーマンスが高いこと、などが求められる。

 効率性を高めるための方策として同社は、ゲストOSの最小構成と最大構成のバランスに留意した。最小構成のV1「CPU 1スレッド、メモリー4Gバイト、ストレージ60Gバイト」から最大構成のV2「CPU 10スレッド、メモリー40Gバイト、ストレージ600Gバイト」まで性能差にして10倍分の仮想マシンを用意した。

 ゲストOSを動作させるホストマシンの構成は、「CPU 32スレッド、メモリー128Gバイト、ストレージ1920Gバイト」とした。これにより、細かく区切れば32台のゲストOS、かなり大きめに区切っても15台ほどのゲストOSを実現できるようになり、サーバーリソースをできるだけ余らせずに運用することができているという。

 費用は、第1世代の頃から、パブリッククラウドよりも安いという。5年間使った場合のコスト比較では、プライベートクラウドがゲスト1台当たり15万円(冗長化した場合、2台で30万円)。一方、パブリッククラウド(費用を前払いできるもの)を5年間使った場合は41万円である。第2世代での比較でも、プライベートクラウドが16万円、パブリッククラウドが23万円になる。

 費用を抑えるポイントとして長谷川氏が指摘するのが、サーバー仮想化ソフトのライセンスである。「一番お金がかかる部分なので、無償のXenServerを使っている」(長谷川氏)。さらに、CPUのコストパフォーマンスも重要で、現行世代のミッドレンジクラスが最もコストパフォーマンスが良いという。

オールフラッシュで性能が向上、重複排除/圧縮を使え

 (2)の速度については、第2世代でオールフラッシュストレージを採用した。それ以前のストレージでは、ベンダー固有の機能をできるだけ使わずにサーバー仮想化ソフトの標準機能だけで運用していたが、オールフラッシュストレージの場合は、ストレージが備える重複排除と圧縮の機能が有益だという。

 オールフラッシュストレージ製品を選んだ際の条件は2つ。1つは、ホットスワップ型SSDのように、ストレージを停止させることなくモジュールを交換できること。もう1つは、HDDの代わりにSSDを載せた製品ではなく、フラッシュ専用のOSを搭載しており、データの書き込みを減らしてSSDの寿命を伸ばすといった機能が備わっていることである。

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