コンシューマー向けネットサービス/モバイルアプリ分野では、数年前からマイクロサービスに取り組んできた企業がある。“バラバラ”を地でいくシステム開発が浸透し、成果を生んでいる。先進企業の取り組みを通じて、マイクロサービスの強さを探る。

自由だからやる気が出る/LINE

 「LINEのマイクロサービス全体を把握しているエンジニアはいない」(LINE 開発1センター LINEサーバー開発室 LINE 小野侑一氏)、「文書化された開発ガイドラインのようなものは存在しない」(LINEの鶴原氏)――。これらの言葉に象徴されるように、LINEは“バラバラ”な開発スタイルを地でいく。個々のチームが思い思いに新たなサービスを生み出せる環境こそが、LINEの強さの源だ。

 2011年6月にリリースし、急激にユーザー数を増やしてきたLINE。今では、月間アクティブユーザーが国内外合わせて約2億500万人にも達する。膨大なアクセスに対応しつつ、ユーザーから日々寄せられる要望にも応えなくてはならない。かなりの初期段階で、マイクロサービス化の取り組みが自然発生的に始まった。現在のLINEは、数十個のマイクロサービスの連携で実現されている。

人が増えれば開発速度も上がる

 LINEの「トーク」など、ユーザーからは一つのまとまりに見える機能も、複数のマイクロサービスで構成されている。メッセージのやり取りやユーザー同士の関係(ソーシャルグラフ)の管理といった中核機能をつかさどるマイクロサービスのほか、音声通話や、企業などが開設する公式アカウントを担うマイクロサービスがある(図5)。

図5 マイクロサービスの組み合わせでユーザーに各種機能を提供
LINEはマイクロサービスの集合体
図5 マイクロサービスの組み合わせでユーザーに各種機能を提供
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 こうした構造を採る最大の理由は、開発生産性の向上だ。「モノリシックなアプリケーションでは、新メンバーは既存システムの全体を把握しないと新機能の開発に着手できない。つまり人が増えても、開発スピードが上がりにくい」(鶴原氏)。むしろ組織が大きくなる分、システムの改変などに伴う調整の手間が増す。

 マイクロサービスなら、新機能の開発時に既存システムの制約を受けにくい。独立したサービスとして、一から機動的に作れるからだ。人を増やす分、開発スピードも上がる。

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