通常の会話というのは、少しぐらい内容に矛盾があったとしても、相手が気持ちよく話していて雰囲気とノリさえ良好ならそれでOKにするのが普通です。

 しかし導入事例のインタビューは「後で文章を書くための材料集め」が目的なので、そうはいきません。内容の矛盾を放置すると、インタビュー(会話)のときはよくても、事例の文章を書き始めたときに矛盾が顕在化し、文章が前後でつじつまが合わなくなります。後で立ち往生することのないよう、矛盾はインタビュー段階で丁寧に解消しなければいけません。

実は重要な「矛盾解消の質問」

 相手から聞き出した事実情報が相互に矛盾しているように思えたとき、それを解消するために行うのが「矛盾解消の質問」です。

 先日、筆者がある建築関係の事例取材で直面した例を挙げましょう。まず「ビルの建設費用や工期は当初の予定通りに抑えられた」という話がありました。さらに話を聞くと今度は「東京オリンピックが決定してから、需給の関係で毎週のように建設費用が高騰してどうにもならなくなった」という話が出てきました。話がかみ合っていません。

 このとき筆者は、「少し前に『予算上限内で建物が建った』というお話があり、その後で『オリンピックで予算が高騰してどうにもならなくなった』というお話がありましたが…」というように、軽く水を向けました。二つの話の矛盾をやんわりと指摘したのです。

 するとインタビュー相手から「まず予算上限を決めたが、その後のオリンピック決定で建設費用相場が上昇した。これは不可抗力なので、それに合わせて予算上限を再設定した。最終費用は再設定した上限予算内に収まった」という回答がありました。それならつじつまが合います。

 この例から分かるのは、人は会話のときに、自分にとって当然のことを「省略する」傾向があるということ。矛盾解消とは、その「省略されたロジックの鎖」をていねいに発見し、つなげていく行為ともいえます。

 細かいことであっても、必ず矛盾はその場で解消していくようにしましょう。

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