「定義やそもそも論は一見、役に立たないようで実はおそろしく役に立つ」というのが筆者の考えです。何か迷いが生じたとき、定義に立ち戻れば思考がクリアになり、解決策が見えます。
今回は「事例はどんな性質でどんな制限のある販促物なのか」を説明します。以下、理論的な記述が続きますが、非常に役に立つ内容なのでよく読んでいただければと思います。
良い広告宣伝とは?
まず事例とは、広告宣伝の一種です。ここで広告宣伝とは「企業が自社商品を売る目的で発信している情報全て」と定義します。テレビCMやネット広告はもちろん、ホームページやパンフレットも広告宣伝です。
営業用プレゼン資料やセミナーの講演も広告宣伝と見なせます。事例もまた、お客様の声とはいえ、作る目的は商品の販促なので、広告宣伝と考えることにします。
では良い広告宣伝とはどういうものでしょうか。それは次の図で表現できます。
左の円は見込み客が知りたいことで、右の円は事例を作る側の企業が言いたいこと、いわゆるマーケティングメッセージです。図中Cの部分は、事例を作る側(売る側)としては大いに宣伝したいが見込み客側(買う側)にとっては、興味がないという「独りよがり」エリアです。これは良くない状態です。
図中Aの部分は、売る側にはどうでもいいが、買う側としては「大いに興味ある、知りたい!」という「情報提供」のエリアです。これはこれで営業上なかなか重要です。
しかし広告として好ましいのは、売る側の意図と買う側の興味の両方を満たすBのエリアです。ここなら二重丸、最良です。
最も制限が厳しい「取材先の対外イメージ」
次に「良い事例」とはどういうものかを考えます。これは円が一つ増えて、少し話が複雑になります。
事例では右下に「事例の取材先(あなたの顧客)の対外イメージを良くできる」という円が増えます。対外イメージとは事例の取材先となる企業が「自分たちは対外的にこうあるべき/こう見られるべき」と考えているセルフイメージのことです。