今回は、事例コンテンツのタイトルのあり方について考察します。その題材として、金融マンガ「ナニワ金融道」と歌謡曲「異邦人」を参考にします。

事例キャッチの役割は「話の地図」を示すこと

 事例記事のタイトルは、「キャッチコピー」とも言い換えられます。キャッチコピーというと「そうだ 京都、行こう。」「ダイヤモンドは永遠の輝き(A Diamond is Forever)」など一言で商品やサービスのイメージが伝わり、人を魅了するコピーが思い浮かびます。

 ここで、事例記事のタイトルの役割は、読者(見込み客)に、その後の本文に何が書いてあるか「話の地図」を示すことです。重要なのは「本文内容を的確に要約し、読者(見込み客)が、この話は自分に関係あるか判断する材料を提供すること」です。インパクトや感性は二の次です。

 ただし、たとえ「話の地図」であってもそれがタイトルである以上、本文作成とは別の文章技術、センスが必要になります。筆者はそのために必要な能力を「説明力と凝縮力」と呼んでいます。

 では、タイトルのつけ方がどれだけコンテンツの価値を変えるかについて、マンガや歌謡曲を題材に考えて見ましょう。

『ナニワ金融道』の元タイトルは別物だった

 1991年のバブル崩壊前夜に当たる1990年に連載が始まった金融マンガ『ナニワ金融道』は、単行本で全19巻の大ヒットとなりました。内容は借金に翻弄される人々をリアルな筆致で描いたもので、その後に登場した金融マンガは『ナニワ金融道』の影響を多少なりとも受けているといってよいでしょう。

 作者の青木雄二氏(故人)による解説文に、当初このマンガに『踏み越えてしまった人々』というタイトルを付けていたという逸話が残っています。

「最初の題は『踏み越えてしまった人々』やった。サラ金で借金したということと、サラ金会社に就職したということをかけたタイトルやったが、長すぎるといわれた。サラ金の話やから『金融の道』でいこうという話が出て、さらに舞台が大阪やから『ナニワ』を付けようとなり『ナニワ金融道』というタイトルで連載がはじまり、金脈を掘り当てたんや」(『50億円の約束手形 ナニワ金融道青木雄二の傑作漫画集「矛と盾」後編』、青木雄二,青木雄二プロダクション著)

 正直なところ、タイトルとしては『ナニワ金融道』のほうが圧倒的に優れていると感じます。もしタイトルが『踏み越えてしまった人々』だったなら、ここまで大ヒットしなかったでしょう。

『異邦人』の曲名はプロデューサーの意向で改題された

 女性シンガーソングライター、久保田早紀氏が1979年に発表した『異邦人』は、シングル140万枚を超えたとされる、異例の大ヒットとなりました。幻想的な歌詞や中近東的でエキゾチックな曲調もあいまって曲は一世を風靡し、今なお、何人もの歌手にカバーされています。

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