前回は、「10年に一度の期待の新技術、SDN(Software Defined Network、ソフトウエア定義ネットワーク)」の販促をどうすればいいか、という考察をして、SDNの商品特性を分析しました。
その結果、「技術がすごいのは間違いないが、非常に売りにくい」という分析結果が出ました。今回は「それでも売るにはどうすればよいか」、その方針を考えてみたいと思います。
ただしその方針は、「SDNの必然性を理解していない人に、どう買う気になってもらうか」という視点で策定することを前提にします。
SDNの技術内容や本質価値を【既に】理解している見込み客であれば、導入事例など販促資料を読まずとも、その必然性、有用性を自ずと理解し、自ら導入検討を開始することでしょう。
しかし販売というのは、「分かっている人」だけに売っていたのでは広がりがありません。そこで事例など販促施策を通じて、SDNを理解していない人にも「その気になってもらう」ことを目指すわけです。
筆者は結局のところ、「すでに分かっている人」でない「まだ分かっていない人」、つまり「圧倒的多数の普通の人」を動かすのは、「勝ち馬感」ではないかと思います。それに有用なのはやはり「導入事例」ではないでしょうか。
先進的な企業が、確かな判断と見識に基づき、自らのネットワークインフラをSDNに更新していく、そんなユーザー事例が多くあればあるほどよい。それを見た顧客が「あの企業もこの企業もSDNを導入している」、「これは我が社も検討しないわけにはいけない」と思うことを期待するわけです。
そうして『気づいた人から始めてます』という空気を醸成し、「普通の人」に「何だかスゴイのかな?」とまずは思わせ、最終的には「やるのが当たり前」「バスに乗り遅れるな」という空気にまでもっていければ販促としては理想的です。
もちろん商品や技術に内実がなければ、いくら販促努力をしても限界がありますが、ことSDNに限っては技術内容は非常に確かなものであり、努力すれば、「大化けさせる」ことは十分に可能であると考えます。
とはいえ販促物の中で「SDNは勝ち馬です」と書くわけにはいきません。ではユーザー事例の中ではSDNの導入効果について、どのような記述、あるい定式化が可能なのか、まずは考察してみましょう。
パターン1 導入効果を素直に書く
もっとも単純かつ最強なのは、事例取材で「SDNの導入効果を教えてください」と質問して、相手が「はい、こんな効果やあんな効果がありました」と答えてくれることです。
導入後、何らかの問題が発生しそうになって、それがSDNのおかげで解決した、つまり「『SDNお手柄!』のようなエピソードがあれば最高です。
ただ、この方式の場合、「導入効果を体感しているのが、社内ユーザーがいる現業部門ではなく情報システム部員である」ことは難点になります。情報システム部門にとっての業務効率化という記述は、場合によっては「情報システム部門がラクになった」という話に解釈されず、それでは経営層など多くのキーパーソンの理解を得られません。