(本記事は、「第3回 顧客ニーズをあれこれ考えても意味はない(前編)~それより先に知るべきことは?」からの続きです)
前回、筆者が実際にクライアントの事例を制作する中で、この「架空のニーズと、真のニーズ」「本当の使い道と、ありえない使い道」の隔たりを痛感させられる経験をしたことがあります、と書きました。今回はその具体的な例を解説します。
それは「ウィキ(Wiki)」を使った情報共有システム、『Confluence』の事例で、取材先は東京都下のある有名大学です(以下、L大学とします)。
商品の使い道は予想と全く違っていた
事例取材に行く前に、まずクライアントと打ち合わせをしました。そこで話題になったのが「いったいL大学は、ウィキを使って何をしているのだろうか?」という根本的な疑問でした。
製品パンフレットには、「ウィキを使って、企業内の情報共有をスピードアップします!」とうたっていました。しかし、これではやや抽象的すぎで、「ウィキ」の部分にどんな製品名を入れても成立する文章になっています。「使い道は何か?」を示しているとはいえません。
ところで「ウィキ」とはおよそ企業向けらしからぬ、うわついた響きを持つ名前の商品分野です。御存知ない方のために解説しますと、まず『ウィキ』とは、「インターネット上で情報を管理する仕組み」を指す手法の一般的な呼称です(特定ツールの商品名ではありません)。