事例制作の専門会社を運営しているという職業柄、「自社で事例を作ったのですが、これで良いかどうか診断してもらえませんか」と求められることがあります。そんなとき筆者は次のように答えています。

 「その事例の中の御社名と商品名をライバル会社のそれに一括変換してください。それでも文章が成り立っているようならダメな事例です」――

 例えばその事例のキャッチコピーが「○○の活用により業務効率化を実現、導入の決め手はコストパフォーマンス!」だったとしたら、これは自社商品でも競合商品でもどちらでも成り立つ文章であり、良くありません。

 そもそも販促物は、自社商品の差異化、つまり「ウチの商品は他より良い!」と伝えるために作るものです。それを読む見込み客の立場からすれば、「この商品の優位点」、つまり「アンタの商品、他と何が違うわけ?」という情報を得るために読むものです。

 にもかかわらずユーザー事例が、どんな社名・商品名でも成り立つような一般的な内容では、読者(=見込み客)の認識を変えることは不可能です。

 販促物には「購買に役立つ情報」が記されているべきです。その情報の価値は、「販促物を読んだ人の『読む前の認識(アタマの中)』と、『読んだ後の認識』の差」という形で定式化できます。

 つまり読んだ後に、「へぇ」とか「ほう」とか「なるほどな~」という形で読者の認識を変えられなければいけません。何も変えられないのであれば、いくら文章がビジネスライクに正しくてもデザインが美麗で先端的でも、その販促物の情報価値は、あえていえばゼロです。


 「どんな商品名でも成り立つ一般的な文章」とは、言い替えると「その商品ジャンルには自社商品一つしかないかのごとくに、そしてこの世に競合などいないかのごとくに書かれた文章」ともいえます。それがソリューション商品である場合、「御社の問題を解決できるのは我が社の商品だけです」ということを暗黙の前提にした文章という意味になります。

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