2015年は、デジタルマーケティングの領域でFTC(米国連邦取引委員会)が非常に活発に動いた一年だったといえるだろう。具体的には、「エンドースメント(金品などの対価をもって自社、もしくは自社製品を推奨してもらう活動)」として定義される活動の中に、新たにソーシャルメディア上のアクションを細かく規定したり、その際のガイドラインを制定したりする動きが相次いだのだ。これはこれまで比較的グレーゾーンが大きかった自社製品の推奨について、“お約束事”を決めるという意味を持っている(関連記事:「『いいね!』ボタンを押させる行為を米国連邦取引委員会が明確に規定」)。

 そのFTCが、年末も押し迫った12月22日にもう一つ大きな発表をリリースした。その内容は「“Native” Advertising and Deceptively Formatted Advertisements」。つまり「“ネイティブ”広告および一見広告に見えない広告」についてだ。

 今回発表があったのはいわゆる綱領だが、ネイティブ広告を含む「一見広告に見えないフォーマットを持つ広告」について、細かな具体例を数多く挙げ、どういったものが該当するかを定義している。仮に該当する場合に、それが“広告である”ことをどう明示すればよいかというビジネスガイドラインを併せて公開している。綱領とはいえ、このガイドラインをベースに今後の法規制などが進んでいくのは間違いないだろう。

 今回の発表だが、大きな反発を避けるため、あえて全米がクリスマス休暇に入る間際のタイミングで出したのでは、と勘繰りたくなった。このリリースを受け、早速IAB(Interactive Advertising Bureau)が懸念を表明した。

 IABは2年も前から、ネイティブ広告を含む新しいインターネット広告市場を健全に成長させる目的で、ネイティブ広告に対する定義やそのガイドラインも含めた啓発活動を進めていた。これらを「The Native Advertising Playbook」と呼ばれる文書にまとめており、誰でも参照できる形で公開している。

 今回のFTCの綱領とビジネスガイドラインは、これまでIABが提唱してきたネイティブ広告の定義やIABの具体的な活動と重なる部分が非常に大きい。今回、政府機関の名前で細かなガイドラインを発表したことで、広告的表現に対する過度な規制などが進むのではないかという不安が巻き起こり、業界内の懸念につながっている。

 今回FTCが公開したビジネスガイドラインは、解釈の仕方によっては非常に厳しいものにもなるかもしれない。特に“広告であることの明示”については、IABのガイドラインよりも一歩踏み込んだものになっている。

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