企業が“マーケティングのデジタル化”を推進するに当たって、「マーケティング部門とIT部門の連携」はどこでも必ずといっていいほど重要になるテーマの一つだ。
だがこの両者の連携は、なかなか思うように進んでいないのが現状だ。マーケティング部門が「IT部門(情報システム部門)はビジネスをきちんと理解していない」と文句を言えば、IT部門は「マーケはテクノロジーやセキュリティに対する認識が甘い」とやり返す。この“水と油の関係”は日本に限った話ではなく、海外においても同様だ。
背景には、マーケティング部門とIT部門の双方の考え方やビジネスにおける評価基準の違いがあるとたびたび指摘されている。米ClickZは2016年12月、その違いが非常によく分かる調査結果を、『Communications Infrastructure: The Backbone of Digital』(編集部注:資料ダウンロードにはサイトへの登録が必要)というタイトルで発表した。
同レポートは、主に米国および英国の企業を中心に実施した調査をまとめたもの。ここからは、「IT部門が“Cutting Edge(最先端)”だと考えている自社のコミュニケーションインフラが、マーケティング部門にとって必ずしもそうではない」という現状が浮かび上がってくる。
調査ではまず、マーケティング部門とIT部門それぞれに、自社のコミュニケーションインフラを「Cutting Edge」、「Good(良い)」、「Serviceable(実用に耐える)」、「Poor(不十分)」の4段階で評価してもらった。すると「Cutting Edge」を選んだ回答者はIT部門で33%だったのに対し、マーケティング部門では8%と非常に少ない値だった。その一方でマーケティング部門は「Serviceable」だという回答を34%が選び、同じ回答を選んだIT部門の10%を大きく上回る数字となっている。
この傾向は、広告やモバイルといった近年急速にトレンドが移り変わる分野で、より顕著に見えているという。自社のコミュニケーションインフラを「デスクトップウェブサイト」、「ソーシャル」、「モバイルウェブサイト」、「ディスプレイ広告(デスクトップ)」、「ディスプレイ広告(モバイル)」、「モバイルアプリ」、「プッシュ通知」という7領域で自己評価を聞いた結果から、その現実が見えてくる。
「デスクトップウェブサイト」や「モバイルウェブサイト」、そして「ソーシャル」といった部分では、IT部門もマーケティング部門もそれほどは悪くない評価をしている(とはいえ、全ての領域でマーケティング部門の評価はIT部門のそれよりも低くなっている)。例えば「デスクトップウェブサイト」では、IT部門の93%は「良い」という評価をしているのに対して、マーケティング部門では71%となっている。ちなみに、両者のギャップが一番小さいのがこの項目だった。