いまやパソコンとスマートフォンというように、一人で複数のデジタル端末を使い分けることが当たり前になっている。それに合わせてマーケティングも、オンラインとオフラインといった単純な括りでは通用しなくなっている。たとえばオンラインを一つとってみても、顧客が複数の端末を使うことを前提として考える必要が出ている。
こういった顧客環境の変化に対応していくため、マーケティングの考え方も変わっている。これまでマーケティング活動は端末と、その端末がアクセスするWebサイトなどのメディアを中心に考えられることが多かった。しかし現在は、そのメディアを複数の端末を使いながら行き来する消費者を中心にして考えられるようになっている。
こうした状況は、2014年に米国で開催された「Advertising Week」で最初に語られた。それが、現在も少しずつ広がりつつある「people-based marketing(さまざまなデータを基に、顧客ごとにカスタマイズした体験を、端末をまたいでも提供できるようにすること)」である。
初めて使われてから約2年が経ったpeople-based marketingだが、その現状をあらためて浮き彫りにしたレポートを、先週米Acxiom社傘下のLiveRamp社が発表した。これによればpeople-based marketingは「ただのバズワードではない」ものの、これから推進するためには様々な課題があるという。
現在、70%のマーケターは、自分たちのメッセージを顧客にリーチさせていくために、五つ以上の異なった顧客接点を使っているとされている。さらに33%のマーケターは、その接点が10にものぼる。
こういった状況を裏付けているかのように、現在マーケターの約60%は、メール配信や広告、SNS管理などで協業しているベンダーの数を増やすことを考えている。増加する一方にある顧客接点を少しでも多く、かつ効果的な形でカバーしていくためのベストな組み合わせを日々模索しているのだ。
このようにアプローチする顧客接点が増えていく中で、それぞれの顧客接点からもたらされるデータは非常に膨れ上がり、それらを統合して管理するのが困難な状況になっている。このレポートでも、自分たちのマーケティング活動は「(オフラインも含めた)多数の顧客接点を統合したかたちで、一貫性のある顧客体験を提供できている」と回答したマーケターは全体の2割にも満たない数字にとどまっている。大多数のマーケターは、多数の顧客接点の統合を実現するには、解決していかなくてはならない課題が多々あると感じている。
これまでpeople-based marketingは、例えばFacebookやGoogleなど、特定のプラットフォームに大きく依存することが前提だった。これらは、PCやスマートフォンなど、異なった端末でログインするユーザーを多く抱えており、ほかのWebサービスやアプリ等の認証サービスにもそのログイン情報が利用されることの多いものだ。