「米国の一部大手広告主に、デジタル広告費を削減する動きが出始めている」――。1週間ほど前に、こんな話題がデジタル広告業界内を駆け巡った。

 これは2017年6月26日に、米メディア「Business Insider」が、米広告調査会社MediaRadar社のデータを基に「米プロクター・アンド・ギャンブル社(P&G)とユニリーバ社がデジタル広告費を大幅に削減した」と報じたことに端を発している。

 この情報は広告主企業である両社が正式に発表しているわけではもちろんなく、あくまでも広告調査会社のデータを基に業界関係者が推測しただけでしかない。ただしこれまで両社はたびたび、デジタル広告、特に運用型広告などバイイング(広告枠の仕入れ・買い付け)が自動化されている広告に対し、その透明性を懸念する発言を繰り返していた。

 このような背景もあって、米国にとどまらず世界の広告市場の動きをも左右しかねない両社の今回の動きは、大きなインパクトとなった。デジタル広告、そしてインターネット上のメディアに対する警告として受け止められているのだ。

 デジタル広告の運用に関わる透明性に対する懸念は、以前から問題となっていた。それはインターネット上、特に運用型広告の枠が設けられているメディアやコンテンツの一部で、規制がほぼ無いに等しい中で運営されていることによる。

 その中には、いわゆる「フェイクニュース(虚偽の情報で作られたニュースのこと)」など、その媒体に広告が掲載されただけで、広告主のブランドイメージを毀損してしまうものも少なくない。

 こうした懸念は、消費者向けに実施した調査からも明らかになっている。米非営利団体CMO Council が2017年6月に発表した「How Brands Annoy Fans」というリポートによれば、全米の約4割(37%)の消費者は「商品の購買やサービスの利用を検討している際に、もしその企業やブランドの広告が自分にとって不快感を感じるコンテンツの側に掲載されていることがわかったら(購買や利用を)考え直す」と回答している。同様に「商品やサービスの利用をやめる」という回答した消費者も11%に上っていた。

 さらに、インターネット上に存在する情報の信頼性は下がっているという、別の調査結果もある。米ギャラップ社が2017年6月に発表した調査結果は、インターネット上のニュースの信頼性が年々低下していることを指摘している。

 以下に具体的な調査結果を引用すると、「完全に信頼している」、「相当信頼している」と回答した割合が2014年で19%、今年は16%と低くなっている。この値はテレビの24%(2017年)、新聞の27%(同じく2017年)よりも低い数字となっている。

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