新しい仕組みや方法論が普及するたびに、これまで使われていたものが「時代遅れ」とされ、「使えない」とばかりに、そのパフォーマンスが全否定されるようなことが時々起こる。例えばソーシャルメディアが広く普及し始めた頃のメールがそうだった。

 Facebookが日本国内で、そのユーザー数を伸ばし始めた2009〜10年頃には、その傾向が取りざたされた。これまでメールを中心に形成されてきた個人間のつながり、そして企業のマーケティング活動によって作られる個人と企業のつながりは、全てソーシャルメディアに置き換えられると考えられていた。

 だが、メールはいまだに企業のマーケティング活動にとって重要なツールとして位置付けられているといえるだろう。しかも規模は縮小されるどころか、むしろ拡大すると予測されている。

 米テクノロジー系調査会社The Radicati Group が今月発表した予測データ(注:リンク先にはエグゼクティブ・サマリーの記されたPDFがある)では、メール市場規模をまとめている。これによると「2017年のメール市場規模は約238億ドル(約2兆6400億円)に達するのに対し、4年後の2021年には約468億ドル(5兆1900億円)と、約2倍の規模に成長する」と予測しているのだ。

 では、なぜ“今さら”メールなのか。これはマーケティングツールの進化と一般化によるところが大きい。今までのように一斉送信が中心だった形から、顧客の行動をトリガーとしたメール配信や、高度なパーソナライゼーションなど、メール自体の役割や位置付けが変化している。

 しかもこれらを実行するためのコストも下がってきた。多くの企業にとって、手が届きやすい状況が生まれたことが、結果的に市場の拡大を後押ししていると考えられる。

 もちろん、ユーザー側の環境が変化したということも、市場拡大の大きな要因の一つだ。単に配信の利便性向上だけではなく、マーケティング活動の中で何らかの形で効果がもたらされていなければ、企業も積極的に利用はしないだろう。

 そういう点では、少なくともメールは読まれていると言ってもいいだろう。ミレニアル世代(1980年代から2000年代初頭にかけて生まれた層)は“dual-inbox”つまり複数のメールアカウントを使い分けることが当たり前になっていて、いわゆる私信と企業から発信されるメッセージとを分けて受信していることが多い。

 さらに、このdual-inboxなユーザーの方が、一つのメールアカウントしか使っていないユーザーよりも、企業から発信されるメッセージをよく読む傾向にあるともいわれている。つまりダイレクトメールやカタログだけを振り分けておき、後でゆっくりと目を通すような感覚に近い。

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