米国の小売業界は、比較的早くからデジタルを積極的に活用していく戦略にシフトしていた。その流れがますます加速していくことを裏付けるレポートが公開された。米調査会社eMarketer社が、米国の小売業界全体からもたらされるデジタル広告の売上高は、2016年に約150億ドル(約1兆6300億円)なると予測したのだ。この金額は2016年に比べて15%増となっている。

 2016年は特に、モバイルへのシフトが強まることが予測されている。小売業界全体からもたらされた2016年のモバイル広告の売上高は、対前年比52%増。金額にして約100億ドル(約1兆900億円)と予測されている。つまり、米国小売業界のデジタル広告費の約3分の2はモバイル広告のために使われることになる。

 これだけ急激にモバイルにシフトしている背景には、もちろん「mコマース」(mはモバイル)の大きな伸び(参考記事:「2017年にスマホ経由の購入が半数突破、ECサイトのモバイル対応は必須条件に」)がある。しかし決してそれだけではない。実店舗における購買活動の促進をはじめとした「オムニチャネル」を推進させていく上で、モバイル広告を積極的に展開しているのだ。

 現在オンラインかオフラインかを問わず、スマートフォンをはじめとしたモバイル端末が消費者の購買行動で果たす役割は非常に大きい。2016年5月に米ニールセンが発表した、2015年第4四半期版「Mobile Wallet Report」によれば、購買活動の中でモバイル端末を使うこととして多かったのが「購買前に商品について調べる(72%)」「価格をチェックする(70%)」「店舗の場所を調べる(60%)」「クーポンの利用(55%)」などとなっていた。ここからも分かるように、いまや購買プロセスの至る所でモバイルが積極的に活用されている。

 また、2016年1月に米調査機関Pew Research Centerが発表したデータは、米国のスマートフォンユーザーの約90%が位置情報を活用したサービスを、何らかの形で利用しているとした。こうした消費者の変化を受けて、米国では位置情報を伴った運用型広告の活用が、2016年以降急速に普及し始めている(参考記事:「位置情報はどこまで広告効果を高められるのか」)。

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