昨年、米アップルの携帯情報端末のOS「iOS9」がリリースされた頃から「アドブロック」が、にわかに注目を集めるようになった。以前からあった機能だが、iOS9のリリースが契機となって激しい議論を招いたといえるだろう。

 このアドブロックとは、ブラウザの拡張機能を使ってウェブサイト訪問時に「望まない項目」が読み込まれることを意図的にブロックする行為を指す。望まない項目にはウィジェットなども含むが、多くの場合は広告となる。2015年7月に米調査会社GlobalWebIndexが発表した調査結果によると、アドブロックを実践しているインターネットユーザーは27%に上ると言われている。

 ユーザーがアドブロックを取り入れる理由はいくつかあるが、主なものに「ユーザー体験」や「プライバシー」などが挙げられる。現在のウェブサイトには、広告配信やアクセス解析を目的に、多数のタグが埋め込まれているのが当たり前になっている。これらタグの読み込みをやめることで、ストレスなくサイトを閲覧したり、自身の行動や閲覧ページに関する情報の流出を阻止したりする目的が多い。

 しかし、ユーザーの端末に広告がなくなればサイトを閲覧しやすくなる反面、サービスを提供する側には大幅な収益減をもたらす。そこで最近では、アドブロックを導入したユーザーがアクセスしても、そのページが閲覧できないようにしてしまう「アンチ・アドブロック」と呼ばれる手法が出てきた。そしてさらにアンチ・アドブロックを無効化する、いわゆる「アンチ・アンチ・アドブロック」までが出現している。

 こうしたイタチごっこのような状況の下、インタラクティブ広告の業界団体である米IAB(Interactive Advertising Bureau)は、一貫してアドブロックに強く反対する姿勢を見せてきた。そしてアドブロックを導入したユーザーにオンラインメディアが取るべきアプローチとして「D.E.A.L.」と呼ばれる方法を推奨している。これは取るべき四つのアクションの頭文字を合わせたもの。具体的には、

D:Detect(対話を始めるために、まず)ユーザーがアドブロックをしていることを見つける
E:Explain広告によってもたらされる価値をきちんと伝える
A:Askメディアとしてユーザーに対する公正な情報提供を維持するためにアドブロックの中止を求める
L:Lift or Limitユーザーの選択に合わせてアクセスの制限、もしくはアクセス制限を解除する

というものだ。

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