日本では、全く話題になっていないのだが、2017年3月29日に、ロケーションターゲティング(位置情報を元にしたターゲティング)に関わる大きな発表があった。米MRC(Media Rating Council=メディア評価評議会)が、ロケーションターゲティングの効果測定に関するガイドライン(編集部注:リンクをクリックするとPDFのダウンロードが始まる)を、米IAB(Interactive Advertising Bureau=インタラクティブ広告協議会)、そして米MMA(Mobile Marketing Association=モバイルマーケティング協会)と共同で発表したのだ。

 このガイドラインについては、広告主企業やメディア企業などで実務に携わる担当者から有識者まで幅広い人員で構成するワーキンググループが、2016年11月に草案を公開していた。草案に対するパブリックコメントを受け、さらに広い意見を取りまとめて、策定したものである。

 その中身は、ロケーションターゲティングに関する約束事を45ページにわたり、技術的な側面を含めて非常に細かく、幅広く網羅したものとなっている。具体的には、位置情報を基にした広告に関わる数々の用語や指標の定義はもちろん、推奨される効果測定方法や消費者に対する情報開示内容と方法、そして監査に関するガイドラインに及ぶ、細かな定義や解説を示している。

 今回MRCだけではなく、IABやMMAという、いわゆるモバイル広告ビジネスで中心となる団体が新たに密なガイドラインを策定し公開した意味は非常に大きい。それは単に、MRCが50年以上の歴史を持ち、オンライン/オフラインを問わず、広告の効果測定に関してその監査や認定審査を手がけてきた団体であるからというだけではない。“業界標準”を明確に定義したことで、モバイル広告での効果測定方法や使われる用語、指標などが統一されたという意味を持つ。この意義は非常に大きい。

 これまでロケーションターゲティングを実践する際のデータの集め方や数字の解釈の仕方、指標の定義などは広告事業者ごとに大きく異なっていた。つまり事業者間のパフォーマンスの差が、きちんとした形で見えづらい状況にあったのだ。

 テレビの視聴率でたとえるなら、テレビ局ごとに視聴率の測定方法や数値の計算方法が異なるようなものだ。ここに業界標準ができると、今後は「モバイルユーザーの行動に関するデータが統一の指標と基準でやり取り」できるようになる。これは広告主となる企業にとって歓迎すべき変化といえるだろう。

 モバイルユーザーの行動に関するデータが統一の指標と基準でやり取りされるようになると、これらデータの活用はさらに進むものと予想できる。特に位置情報を絡めたオーディエンスデータの活用は、今後一層盛んになるだろう。

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