毎年3月から4月にかけてのこの期間、米国ではいくつかの広告代理店や調査会社が、米国および世界の広告市場についてリポートを発表する。2017年も、仏広告大手ピュブリシス傘下の調査会社ゼニス社が3月27日に、そして米広告大手インターパブリック・グループ傘下の調査会社マグナ・グローバル社が3月30日に、相次いで広告市場規模に関するリポートを発表した。

 ゼニス社発表のリポートは「世界の広告市場動向」についてであり、マグナ・グローバル社発表のリポートは「米国の広告市場動向」である。両社のリポート範囲は異なるが、共通した大きなトピックとなっていたのが、「デジタル広告がテレビ広告を市場規模で上回る」というものだった。

 ゼニス社のリポートによると、2017年の世界の広告市場規模は5570億ドル(約62兆円)となる。そのうちデジタル広告が2050億ドル(約22兆8000億円)と約37%を占め、テレビ広告の1920億ドル(約21兆4000億円)を、市場規模で上回ると予測している。

 マグナ・グローバル社のリポートでは、2016年の米国の広告市場規模が2007億ドル(約22兆円)となっていた。そのうちデジタル広告が約700億ドル(約7兆8000億円)で、テレビ広告の約670億ドル(約7兆4700億円)を初めて上回っていたという。米調査会社eMarketer社が2016年に、「2017年に米国ではデジタル広告費がテレビ広告を上回る」と予測していたが、いわゆる“その時”が1年早く訪れていた計算だ。

 これは、決してテレビ広告市場が落ち込んだ結果ではない。両社のリポートを見ても、テレビ広告市場は(わずかではあるが)前年よりも市場規模が大きくなっている。背景には、リオデジャネイロ五輪と米大統領選挙の影響があるようだ。

 大統領選挙はテレビ広告市場にとって、いわゆる“特需”とも呼べる力となって強く働いた。特にローカル放送が、この“特需”の影響を強く受けたことが前年と比べた成長率から見えている。

 デジタル広告がテレビ広告を市場規模で上回る(米国では既に上回っている)ほどになったのは、デジタル広告が凄まじい勢いで市場を拡大させたからにほかならない。ただしデスクトップPC向けの広告市場は、2015年に比べてむしろ2%ほどではあるものの落ち込んでいる(マグナ・グローバル社のリポートより)。

 市場を急激に拡大させたのは、「モバイル広告」だった。2016年のモバイル広告の成長率は、2015年に比べて53%増と桁違いな伸びを見せており、2017年はさらに35%成長するとマグナ・グローバル社は予測している。

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