前回、米国の金融機関が運営するウェブサイトの多くが、本当の意味で「モバイル対応」になっていないという点について触れた。
今回もモバイルの話をするが、取り上げるのは「mコマース(モバイルを使ったeコマース)」だ。mコマースは、新興国を中心に利用が大きく伸びており、2020年までの市場規模は50兆円を超えるといわれている。利用が大きく伸びる中、mコマースの利用のされ方も変わり始めており、直面している課題も具体化してきている。
その一端は、英国に本部を置くMobile Ecosystem Forum(モバイル・エコシステム・フォーラム:MEF)が、2017年1月末に発表したリポート(編集部注:資料ダウンロードにはサイトへの登録が必要)を読み解くことで垣間見える。
本リポートは、米国、英国、フランス、ドイツ(以上「成熟した市場」として扱われている)、ブラジル、インド、南アフリカ、ナイジェリア、中国(以上「新興市場」として扱われている)の9カ国で、約6000人の消費者を対象に2014年と2016年に実施した2回の調査をまとめている。これによると2016年に「過去半年の間にmコマースを利用したことがある」消費者は、対象国全体で78%となっており、2014年の74%と比較してさらなる増加を見せている。
mコマースで購入される品目の傾向も、この2年間で変化してきた。その中でもモバイルアプリ(16%から33%へ上昇)や食品・飲料(11%から26%へ上昇)の伸びが目立っている。一方でデジタルコンテンツはこの2年間で37%から30%と数字を下げていた。
モバイルアプリが多く購入されるようになったことは、それだけ消費者のモバイル利用が多岐にわたり、かつ頻度も高くなった事実を表している。高い利便性を求めるために有償のアプリを購入する行為へのハードルが、全体的に低くなったことも併せて意味している。
食品や飲料の購入が増加しているのは、主に中国をはじめとする新興市場での変化が背景にあるようだ。食品などの日用品を購買する際に、端末にインストールしているアプリを介して、店頭でモバイル決済をする消費者が急増しているという。
モバイル経由でのデジタルコンテンツの購買が減少した背景には、「サブスクリプションサービス」の伸びが関係している。音楽であればSpotify、動画であればNetflixといったサブスクリプションサービスの利用が伸びてきたことで、消費者は音楽や動画コンテンツをその都度単品で購入するという行動をしなくなってきた。その結果が数字となって表れたと分析している。